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接見時における電子機器の利用に関する会長声明

2019年05月15日



接見時における電子機器の利用に関する会長声明

2019(令和元)年5月15日
広島弁護士会会長  今 井   光

1 声明の趣旨
当会は,弁護人及び弁護人になろうとする者(以下「弁護人等」という。)が被疑者又は被告人(以下「被告人等」という。)との接見時に,電磁的記録媒体を再生するための電子機器を持ち込むことが秘密交通権の保障の範囲にあることを表明し,関係各機関に対し,弁護人等と被告人等との秘密接見交通権を保障し,電子機器の持ち込みを理由に接見の中止を求めることのないよう強く求める。
2 声明の理由
(1) 弁護人依頼権を定める憲法34条前段は,単に被告人等が弁護人を選任することを官憲が妨害してはならないというに留まらず,被告人等に対して弁護人を選任した上で,弁護人に相談し,その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を持つことを実質的に保障したものである。
これを受け,刑事訴訟法39条1項は,被告人等に対し,弁護人等と立会人なくして接見する秘密交通権を認めている。この権利は,被告人等が弁護人等から援助を受けることができるための刑事手続上最も重要な基本的権利に属するもので,弁護人等からいえばその固有権の最も重要なものの一つであって弁護活動の根幹をなすものである。なぜなら,形式的に被告人等と弁護人等の接見の機会が確保されたとしても,その打合せ内容が捜査機関や刑事収容施設等の第三者に知られることになれば,萎縮的効果が生じ,被告人等が弁護人等から実質的かつ効果的な援助を受けることを妨げられるからである。
 (2) ところが,2013(平成25)年10月10日,当会会員である弁護人が,弁護人として広島拘置所の接見室にて検察官請求証拠たる電磁的記録媒体(以下「本件DVD」という。)をノートパソコンにより再生し,被告人に音声データを聴取させていたところ,広島拘置所が,その再生を中止させ接見を妨害する事案が発生した。本件DVDは,音声データのみが記録されており,被告人に,その音声を聴取させた上で,誰の音声であるか,何に関する音声であるのか確認することが不可欠な事案であった。
   それにもかかわらず,広島拘置所は,当会会員による接見中に,同会員に対し本件DVDが弁護事件の証拠物であるか否か等について申告書(以下「本件申告書」という。)への記載を求め,さらに本件DVDが裁判資料であると確知した後も本件DVDの再生の中断を求めたのである。
   そこで,同会員は,広島拘置所による本件申告書の記入を求めた行為及び本件DVDの再生の中断を求めた行為は,憲法及び刑事訴訟法が保障する秘密接見交通権を侵害し違法であるとして,国家賠償請求訴訟を提起した。
   この訴訟について,広島地方裁判所民事第1部(龍見昇裁判長)は,2018年(平成30年)4月13日,その請求を棄却する判決を言い渡した。
  これに対し,広島高等裁判所第4部(森一岳裁判長)は,2019年(平成31年)3月28日,弁護人等が弁護事件に関する証拠資料等の情報が記録された電磁的記録媒体を電子機器とともに接見時に持ち込み,被告人等との間で当該電磁的記録媒体を当該電子機器により再生しながら打合せを行うことは,秘密交通権として保障される行為に含まれると認め,さらにそのような電磁的記録媒体を電子機器で再生する行為は,刑事施設内の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があるものとは認められないとして,本件申告書への記入を求める行為及び本件DVDの再生を中断するよう求める広島拘置所の行為が違法であると認定し,第一審の判決を変更して,原告の請求を一部認める判決を下した(以下「広島高裁判決」という。)。
(3) 広島高裁判決は,接見交通権をできるだけ保障する方向性が要請され,接見交通権が保障された趣旨を没却するような制約を加えることは許されないとした上で,秘密接見交通権には弁護人等が弁護事件に関する証拠資料等の情報が記載された書類や電磁的記録の内容が秘密の対象として保護されるばかりでなく,証拠資料を提示しながら打ち合わせを行うこと(電磁的記録を電子機器により再生しながらの打ち合わせを含む)自体も秘密の対象として保護される必要があると判示した。
   そもそも,弁護人等により刑事施設の規律及び秩序を害することは想定されておらず,電子機器の持ち込みを理由に接見を中止させることは弁護人等の秘密接見交通権の侵害にあたる行為であり,広島高裁判決も,広島拘置所が当会会員の接見を中止した行為について,刑事収容施設法117条及び113条に基づいて行われる制止や面会の一時停止等は,単に当該刑事施設が定めた遵守事項に違反したというだけでは足りず,刑事施設内の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性が認められる場合に限られると判示している。
   このような広島高裁判決の判示は,刑事訴訟法の規定する秘密接見交通権が刑事手続上最も重要な基本的権利に属するもので,弁護人等からいえばその固有権の最も重要なものの一つであるという原点に立ち返ったものといえ,被告人等の防御権保障に十分な配慮を尽くしたという点で,極めて重要な先例的意義を有するものである。
 (4) 以上のとおりであるから,当会は,弁護人等が被告人等との接見時に電磁的記録媒体を再生するための電子機器の持込みが秘密交通権の保障の範囲にあることを表明し,電子機器の持ち込みを理由に接見の中止を求めることのない様,関係各機関に対し,弁護人等と被告人等との秘密接見交通権を保障するよう強く求める。
以上