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ニュース2024.06.28

【重要】国際ロマンス・投資・副業等の詐欺被害案件に関する弁護士への依頼にあたってのご注意

【重要】国際ロマンス・投資・副業等の詐欺被害案件に関する弁護士への依頼にあたってのご注意

近時、SNSやマッチングアプリなどで知り合った外国人の相手と親密な関係となった後に、結婚をほのめかされるなどして「私たちの将来のため」「あなたに会いに日本に行く資金を作るため」等の理由で投資を持ち掛けられ、様々な名目でその相手や投資サイトあるいは海外の証券会社に金銭を支払わされた後に、その相手や投資サイトと連絡が取れなくなり出資金が回収できなくなるという、いわゆる国際ロマンス詐欺の被害が急増しています。
さらに、国際ロマンス詐欺の手口以外にも、投資話や副業話を持ちかけて資金を出させて、最初は期待したとおりの配当や利益を支払って信用させつつ、その後、違約金や手数料などと色々と理由をつけては、より多額金員をだまし取るという投資・副業詐欺の被害も急増しています(以上のような詐欺を総称して、以下「国際ロマンス詐欺等」といいます。)。

国際ロマンス詐欺等の案件には、次のような特徴があります。

1.口座凍結しても残高は少ない場合がほとんどであり、暗号資産で送金した場合は交換所の追跡はできても詐欺師の特定はできないなど、他の特殊詐欺事案に比較して被害金の回収が極めて困難であること。

2.非弁業者と提携して国際ロマンス詐欺等の案件を多く受任している弁護士は、回収の困難性を説明せず、被害者に期待を持たせた上で、被害額(国際ロマンス詐欺等は被害額が多くなる傾向がある)に比例した高額な着手金を受領している例が多いこと。

このような国際ロマンス詐欺等の案件を取り扱うとするウェブ上の弁護士の業務広告の中には、以下のような弁護士法、弁護士職務基本規程(以下「基本規程」といいます。)、または弁護士等の業務広告に関する規程(以下「広告規程」といいます。)に違反するおそれのあるものが散見され、他の複数の弁護士会においては、これらの規定に違反するとして対象会員が懲戒手続に付せられるなどしています。

1.取扱事例(成功事例)として、架空の事例が表示されている(事実に合致していない広告・広告規程第3条1号)。

2.弁護士が一人しかいないのに、24時間365日相談対応と表示されている(事実に合致していない広告・広告規程第3条第1項)。

3.これから取り扱おうとする案件であるにもかかわらず、「専門分野」、「専門弁護士」、「国際ロマンス詐欺に特化した弁護士」などと表示されている(誤導または誤認のおそれのある広告・広告規程第3条第2号)。

4.国際ロマンス詐欺等の事案では現実に十分な損害賠償金の回収ができるケースがごく少数であるにもかかわらず、取扱事例として「被害金額1300万円で1100万円回収」、「被害金額500万円で400万円回収」、「被害金額300万円全額回収」といった他の事案で高額回収ができた事例をあたかも国際ロマンス詐欺等の事案で回収したもののように表示し、その例と同じような結果をもたらす可能性が高いと誤解させるような表現をしている(事実に合致していない広告・広告規程第3条第1項、誤導または誤認のおそれのある広告・広告規程第3条第2号)。

5.「LINEで相談します」と広告されているにもかかわらず、実際には事務職員がLINEのメッセージを作成しており、弁護士が対応していない(事務職員等の指導監督・基本規程第19条、非弁提携・弁護士法第27条、同法第72条)。

6.広告主は弁護士であるにもかかわらず、登録事務所以外の事務所を別に賃借して、そこに電話を引き込み、事務職員を常駐させて、広告に表示された電話番号に架電があった場合には「○○弁護士相談室です。」などといって事務職員に応対させ相談を受けさせている(複数事務所・弁護士法第20条第3項、非弁提携・弁護士法第27条、同法第72条、事務職員等の指導監督・基本規程第19条)。

このような広告を行っている弁護士の中には、業者と提携し、業者が手配する事務員に処理を任せ、弁護士が案件の処理に直接関わっていない者もいるようです。しかし、法律事務所の事務員にできることは、相談者の住所・氏名・電話番号を聞き、依頼内容の種類や概要を聞く程度にすぎず、事件の見通しの説明や着手金の決定、委任契約書の締結などは弁護士にしかできませんので、くれぐれもご注意ください。

以上のような国際ロマンス詐欺等の特徴や国際ロマンス詐欺等の業務公告について問題が生じている状況を踏まえると、国際ロマンス詐欺等の案件について弁護士に依頼する際には、慎重な判断が必要になります。
弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなければなりません(基本規程29条1項)。また、弁護士は、依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにもかかわらず、その見込みがあるように装って事件を受任してはなりません(同条3項)。
そのため、国際ロマンス詐欺等の被害に遭われ、被害の回復を弁護士に依頼する方は、依頼する予定の弁護士から、事件処理の進め方、被害回復の可能性を含めた見通し、これらを踏まえた着手金・報酬金の妥当性について十分な説明を受けた上で、依頼するか否かを慎重に検討していただきますようお願いいたします。
特に、深夜に相談をして、すぐに電子契約で弁護士に依頼することを勧められた場合には、一旦冷静になってお考えいただくことを強くおすすめします。

なお、このお知らせは、当会よりも先行してこの問題の調査・対応を進めている東京弁護士会をはじめ各地方の弁護士会が公開している情報も参考にさせていただき掲載しています。

<東京弁護士会非弁提携弁護士対策本部のHP>
https://www.toben.or.jp/know/iinkai/hibenteikei/news/post_7.html
https://www.toben.or.jp/know/iinkai/hibenteikei/news/post_8.html

<参考条文>
弁護士法
(法律事務所)
第二十条 弁護士の事務所は、法律事務所と称する。
二 法律事務所は、その弁護士の所属弁護士会の地域内に設けなければならない。
三 弁護士は、いかなる名義をもつてしても、二箇以上の法律事務所を設けることができない。但し、他の弁護士の法律事務所において執務することを妨げない。

(非弁護士との提携の禁止)
第二十七条 弁護士は、第七十二条乃至第七十四条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

日本弁護士連合会 弁護士職務基本規程
(事務職員等の指導監督)
第十九条
弁護士は、事務職員、司法修習生その他の自らの職務に関与させた者が、その者の業務に関し違法若しくは不当な行為に及び、又はその法律事務所の業務に関して知り得た秘密を漏らし、若しくは利用することのないように指導及び監督をしなければならない。

日本弁護士連合会 弁護士等の業務広告に関する規程
(禁止される広告)
第三条
弁護士等は、次に掲げる広告をすることができない。
一 事実に合致していない広告
二 誤導又は誤認のおそれのある広告
三 誇大又は過度な期待を抱かせる広告