会長声明2021.07.26
平成30年7月豪雨災害における被災者生活再建支援法の加算支援金について支給申請期間延長を求める会長声明
2021年(令和3年)7月26日
広島弁護士会 会長 池上 忍
第1 声明の趣旨
平成30年7月豪雨災害における被災者生活再建支援法(以下「法」という。)に基づく加算支援金について、広島県は、県下の各自治体の実情に鑑み、支給申請期間を延長するよう要請する。
第2 声明の理由
1 法に基づく加算支援金については、住宅の再建方法などに応じて200万円までの支援金が支給される制度であり、災害復興住宅融資制度とともに、被災者が住宅再建を行う際に重要な制度である。この加算支援金について、法施行令第4条第2項では、支給申請期間を自然災害が発生した日から37か月を経過する日までとしている。
これにより、平成30年7月豪雨においては、令和3年8月4日が支給申請期限とされている。
他方、災害から3年程度では、十分な復旧や復興が行われていないことも想定されるため、支給期限の延長についても規定が存在する。
すなわち、同条第4項では、都道府県が「被災地における危険な状況の継続その他やむを得ない事情により被災世帯の世帯主がこれらの規定に規定する期間内に法第3条第1項の規定による支援金の支給の申請をすることができないと認めるときは、その期間を延長することができる。」としている。つまり、都道府県において、被災地自治体における実情を踏まえ、申請期間を延長することが法令上認められているのである。
2 広島県においては、平成30年7月豪雨により、広範囲で大規模な土砂災害が相次いで発生し、多くの住民が全壊、大規模半壊等重大な被害を受けた。現在も90名近い人々が仮住まいとなっており、多くの住民が元の土地に戻るのかどうか悩みながら生活をしている状況である。
また、広島県では、砂防堰堤や河川の修復工事は、ある程度進捗しているとはいえ、まだ完全に工事が完了しているわけではない。さらに言えば、砂防堰堤などの工事が完了しても、元の土地に戻るかどうかは元の地域コミュニティが復活できるのかなどの要素によっても決まってくるため、工事が完了すれば、直ちに、元の場所において住宅再建できると決断できるわけではない。
3 このように被災者が住宅再建を行うにあたり、被災前の土地に戻るかどうか、さらには、別の場所で住宅を再築する、あるいは、賃貸住宅に居住するかどうかといった判断をするためには、被災地の復興計画や、元々のコミュニティの回復の状況、さらに、再建に向けた資金調達の目処など、様々な点を検討する必要がある。これらを考慮すると住宅再建を促すための加算支援金については、被災地の実態に応じて申請期間を延長し、被災者が希望する形での生活再建を支援する必要がある。なお、平成30年7月豪雨により同様に被害を受けている岡山県倉敷市・高梁市、愛媛県宇和島市・大洲市・西予市では、すでに、原則として条件を付することなく、12か月の延長が決定されている。同一の災害において被害を受けた被災者がこのような行政の取扱いの違いにより住宅再建の制度を奪われてしまうことは、被災者間の不公平を生じさせることにも繋がる。
4 広島県は「平成30年7月豪雨災害からの復旧・復興プラン【発災から3年後 進捗状況報告書】」(令和3年6月)において、「災害関連事業の進捗状況によって、住宅再建が完了していない世帯がある」ことを現状の課題とし、今後、「住宅再建が完了していない世帯に対し、供与延長を行うとともに、個別フォローを実施することで入居世帯へ継続した支援を行っていく」としている。広島県が、このような認識であるならば、県下すべての自治体において、いまだ住宅再建が完了していない世帯に対して、被災者目線にたって住宅再建のための制度が利用できるような措置を講ずるべきである。
5 以上のとおり、広島県において、法施行令第4条第4項に基づき、被災者の住宅再建という復旧・復興に必要不可欠な要素を支援できるよう、柔軟に、かつ、できる限り長期間にわたって支援金の支給申請期間を延長するよう要請する。
以上
2021年(令和3年)7月26日
広島弁護士会 会長 池上 忍
第1 声明の趣旨
平成30年7月豪雨災害における被災者生活再建支援法(以下「法」という。)に基づく加算支援金について、広島県は、県下の各自治体の実情に鑑み、支給申請期間を延長するよう要請する。
第2 声明の理由
1 法に基づく加算支援金については、住宅の再建方法などに応じて200万円までの支援金が支給される制度であり、災害復興住宅融資制度とともに、被災者が住宅再建を行う際に重要な制度である。この加算支援金について、法施行令第4条第2項では、支給申請期間を自然災害が発生した日から37か月を経過する日までとしている。
これにより、平成30年7月豪雨においては、令和3年8月4日が支給申請期限とされている。
他方、災害から3年程度では、十分な復旧や復興が行われていないことも想定されるため、支給期限の延長についても規定が存在する。
すなわち、同条第4項では、都道府県が「被災地における危険な状況の継続その他やむを得ない事情により被災世帯の世帯主がこれらの規定に規定する期間内に法第3条第1項の規定による支援金の支給の申請をすることができないと認めるときは、その期間を延長することができる。」としている。つまり、都道府県において、被災地自治体における実情を踏まえ、申請期間を延長することが法令上認められているのである。
2 広島県においては、平成30年7月豪雨により、広範囲で大規模な土砂災害が相次いで発生し、多くの住民が全壊、大規模半壊等重大な被害を受けた。現在も90名近い人々が仮住まいとなっており、多くの住民が元の土地に戻るのかどうか悩みながら生活をしている状況である。
また、広島県では、砂防堰堤や河川の修復工事は、ある程度進捗しているとはいえ、まだ完全に工事が完了しているわけではない。さらに言えば、砂防堰堤などの工事が完了しても、元の土地に戻るかどうかは元の地域コミュニティが復活できるのかなどの要素によっても決まってくるため、工事が完了すれば、直ちに、元の場所において住宅再建できると決断できるわけではない。
3 このように被災者が住宅再建を行うにあたり、被災前の土地に戻るかどうか、さらには、別の場所で住宅を再築する、あるいは、賃貸住宅に居住するかどうかといった判断をするためには、被災地の復興計画や、元々のコミュニティの回復の状況、さらに、再建に向けた資金調達の目処など、様々な点を検討する必要がある。これらを考慮すると住宅再建を促すための加算支援金については、被災地の実態に応じて申請期間を延長し、被災者が希望する形での生活再建を支援する必要がある。なお、平成30年7月豪雨により同様に被害を受けている岡山県倉敷市・高梁市、愛媛県宇和島市・大洲市・西予市では、すでに、原則として条件を付することなく、12か月の延長が決定されている。同一の災害において被害を受けた被災者がこのような行政の取扱いの違いにより住宅再建の制度を奪われてしまうことは、被災者間の不公平を生じさせることにも繋がる。
4 広島県は「平成30年7月豪雨災害からの復旧・復興プラン【発災から3年後 進捗状況報告書】」(令和3年6月)において、「災害関連事業の進捗状況によって、住宅再建が完了していない世帯がある」ことを現状の課題とし、今後、「住宅再建が完了していない世帯に対し、供与延長を行うとともに、個別フォローを実施することで入居世帯へ継続した支援を行っていく」としている。広島県が、このような認識であるならば、県下すべての自治体において、いまだ住宅再建が完了していない世帯に対して、被災者目線にたって住宅再建のための制度が利用できるような措置を講ずるべきである。
5 以上のとおり、広島県において、法施行令第4条第4項に基づき、被災者の住宅再建という復旧・復興に必要不可欠な要素を支援できるよう、柔軟に、かつ、できる限り長期間にわたって支援金の支給申請期間を延長するよう要請する。
以上