会長声明2022.04.14
日米地位協定を改定し、在日米軍へ検疫法を適用することを求める会長声明
広島弁護士会 会 長 久 笠 信 雄
第1 声明の趣旨
当会は、日米地位協定を改定し、在日米軍に対して検疫法が適用されることを明記し、また、検疫法の適用を除外する効果をもたらす検疫法特例を廃止して、在日米軍・軍属、それら家族に対する検疫を日本政府が実施できるよう求める。
第2 声明の理由
2020年(令和2年)から世界規模で爆発的に感染が拡大した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、日本国内、在日米軍基地内でも感染が拡大してきた。
2021年(令和3年)12月17日ころから、感染力の強いオミクロン株の感染が拡大し始め、沖縄県のキャンプ・ハンセンや山口県の米海兵隊岩国航空基地で大規模なクラスターが発生した。その後これらの基地の日本人従業員からオミクロン株が確認され、2022年(令和4年)1月からは、沖縄県、山口県、広島県などの日本各地の米軍基地や施設区域に隣接する地域を中心に、日本全国各地で感染者数が急増した。
今回感染が確認されたオミクロン株について、広島県は、岩国市との関連が強く疑われる感染例が多くあるとして、同基地と米国大使館に対策の強化を文書で緊急要請している。また、沖縄県は、国立感染症研究所の解析等を踏まえ米軍基地由来のものと指摘し、山口県も岩国基地で感染が確認された基地関係者から、日本人基地従業員や自衛隊員へと感染が広がったと指摘するなど感染が広がった要因は、米軍関係者の影響による可能性が高いものと判断をしている。
日本政府は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行を踏まえ、オミクロン株に対する水際措置の強化として、2021年(令和3年)11月30日から、査証発給済者を含む外国人の入国を停止する極めて厳しい「水際対策」を採ってきた。
ところが、米軍は、2021年(令和3年)9月、米国出国時の新型コロナウイルス感染の検査を、日本側に知らせないまま一方的に中止し、検査を経ずに入国をしている外国人が多数生じていたことが明らかになっている。
このような事態になった原因は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(以下「日米地位協定」という。)9条が、出入国管理に関する日本の法令が米軍人等には適用されない旨を定めていること、日米地位協定には検疫についての明文の規定が置かれていないこと、日米合同委員会での合意により、米軍人等の検疫は原則として米国側の手に委ねられていること、及び、国内法令である「外国軍用艦船等に関する検疫法特例」(以下「検疫法特例」という)が検疫法の多くの規定を適用除外とし、日本側がほとんど米軍人等の検疫に関与できないことにある。
これに対し、ドイツでは、NATO軍地位協定のボン補足協定54条1項により、駐留軍もドイツ国内法による感染症防止のための手続に服する旨の明文規定が置かれており、日本とは国内法の適用の有無という点で大きく異なっている。日本政府は、このような状況にあっても、日米地位協定の改定を求めないとし、今般、日米合同委員会に新しく設置された検疫・保健分科委員会を活用して対応するとするが不十分というべきである。
新型コロナウイルス感染症は未だ収束の兆しはない。日本国内で今回のような事態を二度と生じさせないためには、日米地位協定を改定し、在日米軍に対して検疫法が適用されることを明記し、検疫法の適用を除外する効果をもたらす検疫法特例は廃止して、在日米軍・軍属、それら家族に対する検疫を日本政府がその権限と責任において実施できるようにすべきである。
以上
以上
広島弁護士会 会 長 久 笠 信 雄
第1 声明の趣旨
当会は、日米地位協定を改定し、在日米軍に対して検疫法が適用されることを明記し、また、検疫法の適用を除外する効果をもたらす検疫法特例を廃止して、在日米軍・軍属、それら家族に対する検疫を日本政府が実施できるよう求める。
第2 声明の理由
2020年(令和2年)から世界規模で爆発的に感染が拡大した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、日本国内、在日米軍基地内でも感染が拡大してきた。
2021年(令和3年)12月17日ころから、感染力の強いオミクロン株の感染が拡大し始め、沖縄県のキャンプ・ハンセンや山口県の米海兵隊岩国航空基地で大規模なクラスターが発生した。その後これらの基地の日本人従業員からオミクロン株が確認され、2022年(令和4年)1月からは、沖縄県、山口県、広島県などの日本各地の米軍基地や施設区域に隣接する地域を中心に、日本全国各地で感染者数が急増した。
今回感染が確認されたオミクロン株について、広島県は、岩国市との関連が強く疑われる感染例が多くあるとして、同基地と米国大使館に対策の強化を文書で緊急要請している。また、沖縄県は、国立感染症研究所の解析等を踏まえ米軍基地由来のものと指摘し、山口県も岩国基地で感染が確認された基地関係者から、日本人基地従業員や自衛隊員へと感染が広がったと指摘するなど感染が広がった要因は、米軍関係者の影響による可能性が高いものと判断をしている。
日本政府は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行を踏まえ、オミクロン株に対する水際措置の強化として、2021年(令和3年)11月30日から、査証発給済者を含む外国人の入国を停止する極めて厳しい「水際対策」を採ってきた。
ところが、米軍は、2021年(令和3年)9月、米国出国時の新型コロナウイルス感染の検査を、日本側に知らせないまま一方的に中止し、検査を経ずに入国をしている外国人が多数生じていたことが明らかになっている。
このような事態になった原因は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(以下「日米地位協定」という。)9条が、出入国管理に関する日本の法令が米軍人等には適用されない旨を定めていること、日米地位協定には検疫についての明文の規定が置かれていないこと、日米合同委員会での合意により、米軍人等の検疫は原則として米国側の手に委ねられていること、及び、国内法令である「外国軍用艦船等に関する検疫法特例」(以下「検疫法特例」という)が検疫法の多くの規定を適用除外とし、日本側がほとんど米軍人等の検疫に関与できないことにある。
これに対し、ドイツでは、NATO軍地位協定のボン補足協定54条1項により、駐留軍もドイツ国内法による感染症防止のための手続に服する旨の明文規定が置かれており、日本とは国内法の適用の有無という点で大きく異なっている。日本政府は、このような状況にあっても、日米地位協定の改定を求めないとし、今般、日米合同委員会に新しく設置された検疫・保健分科委員会を活用して対応するとするが不十分というべきである。
新型コロナウイルス感染症は未だ収束の兆しはない。日本国内で今回のような事態を二度と生じさせないためには、日米地位協定を改定し、在日米軍に対して検疫法が適用されることを明記し、検疫法の適用を除外する効果をもたらす検疫法特例は廃止して、在日米軍・軍属、それら家族に対する検疫を日本政府がその権限と責任において実施できるようにすべきである。
以上
以上