声明・決議・意見書

会長声明2008.02.13

国連総会における死刑執行の停止決議に関する会会長声明

広島弁護士会
会長  武井康年

1  2007年(平成19年)12月18日(日本時間19日)、国連総会本会議において、すべての死刑存置国に対して、死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の一時停止を求めることなどを内容とする決議が採択された。
当会は、日本政府が前記総会決議を真摯に受け止め、速やかに死刑の執行を一時停止し、制度の見直し作業に着手することを求める。
2  国連総会において市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)が採択された1966年(昭和41年)以降、ヨーロッパを中心に死刑廃止の潮流は強まり、ヨーロッパは事実上の死刑廃止地域となった。死刑廃止の流れはヨーロッパにとどまらず、ラテンアメリカ、更にはアフリカにも及んでおり、1989年(平成元年)には自由権規約第二選択議定書(死刑廃止条約)が採択された。いまや、世界で死刑を廃止した国は133か国であり(事実上のものを含めて)、存置国の64を大きく上回っている。
今回の総会決議は、こうした死刑廃止へ向かう国際社会の潮流を反映したものである。
前記総会決議は、死刑存置国に対し、即時の死刑廃止を求めるのではなく、現実的な改善を求めている。すなわち、(1)死刑に直面する者に対する権利保障を規定した国際基準を尊重すること、(2)死刑の適用、及び、上記国際基準の遵守に関する情報を国連事務総長に提供すること、(3)死刑の適用を徐々に制限し、死刑の適用が可能な犯罪の数を削減すること、(4)死刑廃止を視野に入れ、死刑執行に関するモラトリアムを確立すること、である。これらの多くは、これまで国際人権(自由権)規約委員会や拷問禁止委員会によって改善を迫られてきた事項であり、我が国が早急に取り組まなければならない課題である。
3  ところが、我が国においては、2006年(平成18年)12月25日から本年2月1日までの間に16名もの死刑確定者に対する執行がなされ、特に近時、高齢者や心身に重大な疾患を持つ者への死刑が執行されるなど、国際基準に照らし大いに問題のある執行が繰り返されていることは到底看過できない。
さらに、昨年11月に、広島地裁で死刑求刑事件に対し無罪判決が下されたことは、誤った訴追により死刑求刑がなされ、誤判によって死刑が確定する可能性を否定できないことを明確に示している。
4  当会は、死刑確定者に対する死刑が執行されたことについて遺憾の意を表明し、死刑をめぐる情報が開示された上、死刑の存廃についての国民的な議論が尽くされるまで、一定期間、死刑の執行を停止するよう要請しているが、前記総会決議が採択されたことを受けて、日本政府が速やかに死刑の執行を一時停止し、制度の見直しを行う作業に着手すべきことを改めて求めるものである。

以上