会長声明2012.12.12
給費制復活を含む司法修習生への経済的支援を求める会長声明
広島弁護士会
会長 小田清和
2012(平成24)年11月27日から、第66期の司法修習が開始され、広島にも59名の司法修習生が配属された。この中には、広島に配属され司法修習を行うため、広島で新たに住居を求めたり、引越し費用の負担を行った司法修習生もいる。
司法修習生は、司法を担う法曹としての高い専門性を習得するため一年間司法修習に専念する義務を負い(裁判所法第67条第2項)、兼業・兼職が禁止され、収入を得る道はない。
新第64期及び現行第65期までの司法修習生に対しては、司法修習中の生活費等の必要な費用が国費から支給されていた(以下「給費制」という)が、昨年11月から司法修習を開始した新第65期の司法修習生から、給費制は廃止され、司法修習費用を貸与する制度(以下「貸与制」という)に移行したため、給費制においては負担しなくてよかった費用を、貸与制では個人負担しなければならない者も出てきており、修習地の配属によっては、自己負担額に差が出てきている。
日本弁護士連合会は、本年6月、新第65期司法修習生に対し、司法修習中の生活実態を明らかにすることを目的としてアンケートを実施した。このアンケートの集計結果によれば、28.2%の司法修習生が、司法修習生を辞退することを考えたことがあると回答し、その理由として、86.1%が貸与制、74.8%が弁護士の就職難・経済的困窮を挙げた。すなわち、司法試験に合格していながら、経済的理由から法曹への道を諦めることを検討した者が3割近くもいる実態が明らかになった。
さらに、司法修習生の月平均の支出額は、住居費の負担がない場合が13万8000円であるのに対し、住居費の負担がある場合は21万5800円であった。司法修習の開始に伴い修習配属地への引越しが必要だった司法修習生は、約6割を占め、この場合には、引越し費用等で平均25万7500円が別途必要になるという結果であった。
以上のとおり、新第65期司法修習生に対する生活実態アンケートにより、貸与制の不平等さや不合理さが改めて明確になった。司法修習生の多くは大学及び法科大学院の奨学金等の返済義務を負担しており、更に貸与制による借金が加算されることになる。こうした経済的負担の重さや昨今のいわゆる就職難が法曹志願者を減少させ、有為で多様な人材が法曹の道を断念する一因となっていることは、容易に推測できることである。また、新聞報道によれば広島に配属された司法修習生の中にも、就職難という現実の中で、奨学金に加えて貸与金の返済ができるのか不安に感じていると意見表明している者もいる。
本年7月27日に成立した裁判所法の一部を改正する法律によれば、「司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点から、法曹の養成における司法修習生の修習の位置づけを踏まえつつ、検討が行われるべき」ことが確認された。これを受けて、同年8月21日の閣議決定により法曹養成制度検討会議が設置され、現在検討進められている。
司法修習生は、我が国の司法制度を担う人材であり、法曹養成制度は、司法インフラ整備の一環として位置づけられ、国が費用と責任をもって人材を育成すべきものである。国が育成費用に責任を持つことを明らかにすることにより、有為の人材が集まり、国民から信頼される司法制度の維持につながるものである。
当会は、国に対して、こうした点を十分に理解し、有為で多様な人材が経済的事情から法曹への道を断念することがないように、早急に給費制の復活を行い、また、新65期及び新66期に対しても貸与金の返還義務の免除を行うほか、適切な措置をとることを求めるものである。
以上
広島弁護士会
会長 小田清和
2012(平成24)年11月27日から、第66期の司法修習が開始され、広島にも59名の司法修習生が配属された。この中には、広島に配属され司法修習を行うため、広島で新たに住居を求めたり、引越し費用の負担を行った司法修習生もいる。
司法修習生は、司法を担う法曹としての高い専門性を習得するため一年間司法修習に専念する義務を負い(裁判所法第67条第2項)、兼業・兼職が禁止され、収入を得る道はない。
新第64期及び現行第65期までの司法修習生に対しては、司法修習中の生活費等の必要な費用が国費から支給されていた(以下「給費制」という)が、昨年11月から司法修習を開始した新第65期の司法修習生から、給費制は廃止され、司法修習費用を貸与する制度(以下「貸与制」という)に移行したため、給費制においては負担しなくてよかった費用を、貸与制では個人負担しなければならない者も出てきており、修習地の配属によっては、自己負担額に差が出てきている。
日本弁護士連合会は、本年6月、新第65期司法修習生に対し、司法修習中の生活実態を明らかにすることを目的としてアンケートを実施した。このアンケートの集計結果によれば、28.2%の司法修習生が、司法修習生を辞退することを考えたことがあると回答し、その理由として、86.1%が貸与制、74.8%が弁護士の就職難・経済的困窮を挙げた。すなわち、司法試験に合格していながら、経済的理由から法曹への道を諦めることを検討した者が3割近くもいる実態が明らかになった。
さらに、司法修習生の月平均の支出額は、住居費の負担がない場合が13万8000円であるのに対し、住居費の負担がある場合は21万5800円であった。司法修習の開始に伴い修習配属地への引越しが必要だった司法修習生は、約6割を占め、この場合には、引越し費用等で平均25万7500円が別途必要になるという結果であった。
以上のとおり、新第65期司法修習生に対する生活実態アンケートにより、貸与制の不平等さや不合理さが改めて明確になった。司法修習生の多くは大学及び法科大学院の奨学金等の返済義務を負担しており、更に貸与制による借金が加算されることになる。こうした経済的負担の重さや昨今のいわゆる就職難が法曹志願者を減少させ、有為で多様な人材が法曹の道を断念する一因となっていることは、容易に推測できることである。また、新聞報道によれば広島に配属された司法修習生の中にも、就職難という現実の中で、奨学金に加えて貸与金の返済ができるのか不安に感じていると意見表明している者もいる。
本年7月27日に成立した裁判所法の一部を改正する法律によれば、「司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点から、法曹の養成における司法修習生の修習の位置づけを踏まえつつ、検討が行われるべき」ことが確認された。これを受けて、同年8月21日の閣議決定により法曹養成制度検討会議が設置され、現在検討進められている。
司法修習生は、我が国の司法制度を担う人材であり、法曹養成制度は、司法インフラ整備の一環として位置づけられ、国が費用と責任をもって人材を育成すべきものである。国が育成費用に責任を持つことを明らかにすることにより、有為の人材が集まり、国民から信頼される司法制度の維持につながるものである。
当会は、国に対して、こうした点を十分に理解し、有為で多様な人材が経済的事情から法曹への道を断念することがないように、早急に給費制の復活を行い、また、新65期及び新66期に対しても貸与金の返還義務の免除を行うほか、適切な措置をとることを求めるものである。
以上