会長声明2013.01.18
MV-22オスプレイの普天間飛行場配備に抗議し,日本国内での低空飛行訓練の実施に反対する声明
広島弁護士会
会長 小田 清和
1 米国防総省は,2012年7月23日,12機の垂直離着陸機MV-22オスプレイを山口県岩国市の岩国基地に陸揚げし,同年10月1日に沖縄県宜野湾市の普天間飛行場に配備した。
2012年9月下旬から10月上旬まで,岩国基地に配備されたオスプレイは,日米の合意に反して,岩国市の上空における訓練飛行を行うなど,米海兵隊は,岩国市及びその周辺地域の安全に配慮しない飛行訓練を敢行した。
オスプレイの普天間飛行場配備は,沖縄県民並びに飛行ルート上の各地域住民の生命・身体の安全の保障という見地から許されるべきものではない。
2 オスプレイは,開発段階から事故が発生していたばかりでなく,2005年に量産体制に移行した後も事故が発生しており,最近も,2012年4月11日,米海兵隊のMV-22がモロッコでの訓練中に墜落し搭乗員2名が死亡する等の事故を起こし,さらに同年6月14日,フロリダ州で訓練中のCV-22オスプレイ(米空軍向けの同一機種)が墜落し乗員5名が負傷する事故を起こした。
米海兵隊は,これらの墜落事故について,人為的ミスが原因であることを強調する。
しかしながら,わずか2か月あまりの間に2度の墜落事故が発生していること自体看過できないものであり,仮に,これらの事故が操縦ミス等の人為的な原因によるものであったとしても,それが直ちに墜落事故に繋がっている事実からすれば,オスプレイ自体が事故発生の危険性の極めて高い機種であるといわざるをえない。
3 そもそもオスプレイは,設計上,「オートローテーション機能」(エンジン停止時に,機体が落下する際に生じる気流を利用して安全に着陸する機能)に欠陥があるとの指摘や,操縦ミスで失った制御を取り戻そうと操作しても,低速飛行時はフライトコンピューター(操縦制御装置)が操縦士の指示に従わず,そのまま墜落する可能性が高いとの指摘がされているなど,その機種構造において極めて重大な危険をはらんでいると疑われてもやむを得ない航空機である。
4 他方,米国が発表した「MV-22の普天間飛行場配備及び日本での運用に関する環境レビュー」によれば,オスプレイが沖縄本島のほぼ全域を飛行することが明らかとなっただけでなく,全国6ルートに沿って低空飛行訓練をすることが予定されていることが判明しているほか,更に広島県内においても,ブラウンルートによる低空飛行訓練実施が推測され(米海兵隊は訓練実施を否定していない),オスプレイの墜落事故の危険は全国に広がるといわねばならない。
また,オスプレイが訓練を予定している本州以南の6つのルート等は,日米地位協定に基づく提供施設・区域ではない。提供施設・区域以外の日本の国土で日本政府が米軍に訓練を行わせることには,日米地位協定上も大きな問題がある。
5 今般のオスプレイ配備の強行は,沖縄県民,岩国市民,広島県民はじめ,飛行ルート上の各地域住民の生命身体そして財産に対する重大な侵害のおそれを生じさせるものであり,憲法が保障する幸福追求権の一内容である人格権(13条),そして,平和のうちに生存する権利(前文,9条,13条など)の精神に反するといわざるを得ず,当会としても看過することができない。
6 広島弁護士会は,上記のオスプレイ配備に対し強く抗議し,日本政府に対し,米海兵隊が,オスプレイの日本国内での低空飛行訓練を実施しないよう米国政府と交渉することを強く求めるものである。
以上
広島弁護士会
会長 小田 清和
1 米国防総省は,2012年7月23日,12機の垂直離着陸機MV-22オスプレイを山口県岩国市の岩国基地に陸揚げし,同年10月1日に沖縄県宜野湾市の普天間飛行場に配備した。
2012年9月下旬から10月上旬まで,岩国基地に配備されたオスプレイは,日米の合意に反して,岩国市の上空における訓練飛行を行うなど,米海兵隊は,岩国市及びその周辺地域の安全に配慮しない飛行訓練を敢行した。
オスプレイの普天間飛行場配備は,沖縄県民並びに飛行ルート上の各地域住民の生命・身体の安全の保障という見地から許されるべきものではない。
2 オスプレイは,開発段階から事故が発生していたばかりでなく,2005年に量産体制に移行した後も事故が発生しており,最近も,2012年4月11日,米海兵隊のMV-22がモロッコでの訓練中に墜落し搭乗員2名が死亡する等の事故を起こし,さらに同年6月14日,フロリダ州で訓練中のCV-22オスプレイ(米空軍向けの同一機種)が墜落し乗員5名が負傷する事故を起こした。
米海兵隊は,これらの墜落事故について,人為的ミスが原因であることを強調する。
しかしながら,わずか2か月あまりの間に2度の墜落事故が発生していること自体看過できないものであり,仮に,これらの事故が操縦ミス等の人為的な原因によるものであったとしても,それが直ちに墜落事故に繋がっている事実からすれば,オスプレイ自体が事故発生の危険性の極めて高い機種であるといわざるをえない。
3 そもそもオスプレイは,設計上,「オートローテーション機能」(エンジン停止時に,機体が落下する際に生じる気流を利用して安全に着陸する機能)に欠陥があるとの指摘や,操縦ミスで失った制御を取り戻そうと操作しても,低速飛行時はフライトコンピューター(操縦制御装置)が操縦士の指示に従わず,そのまま墜落する可能性が高いとの指摘がされているなど,その機種構造において極めて重大な危険をはらんでいると疑われてもやむを得ない航空機である。
4 他方,米国が発表した「MV-22の普天間飛行場配備及び日本での運用に関する環境レビュー」によれば,オスプレイが沖縄本島のほぼ全域を飛行することが明らかとなっただけでなく,全国6ルートに沿って低空飛行訓練をすることが予定されていることが判明しているほか,更に広島県内においても,ブラウンルートによる低空飛行訓練実施が推測され(米海兵隊は訓練実施を否定していない),オスプレイの墜落事故の危険は全国に広がるといわねばならない。
また,オスプレイが訓練を予定している本州以南の6つのルート等は,日米地位協定に基づく提供施設・区域ではない。提供施設・区域以外の日本の国土で日本政府が米軍に訓練を行わせることには,日米地位協定上も大きな問題がある。
5 今般のオスプレイ配備の強行は,沖縄県民,岩国市民,広島県民はじめ,飛行ルート上の各地域住民の生命身体そして財産に対する重大な侵害のおそれを生じさせるものであり,憲法が保障する幸福追求権の一内容である人格権(13条),そして,平和のうちに生存する権利(前文,9条,13条など)の精神に反するといわざるを得ず,当会としても看過することができない。
6 広島弁護士会は,上記のオスプレイ配備に対し強く抗議し,日本政府に対し,米海兵隊が,オスプレイの日本国内での低空飛行訓練を実施しないよう米国政府と交渉することを強く求めるものである。
以上