声明・決議・意見書

会長声明2014.01.21

再審請求前の弁護人及び弁護人となろうとする者の秘密接見交通権の保障を求める会長声明

広島弁護士会
会長 小野裕伸

平成25年12月10日,最高裁判所は,「死刑確定者又は再審請求弁護人が再審請求に向けた打合せをするために秘密面会の申出をした場合に,これを許さない刑事施設の長の措置は,・・・特段の事情がない限り,・・・国家賠償法1条1項の適用上違法となると解するのが相当である。」と判示して,死刑確定者と再審請求手続の弁護人である当会会員との再審請求打合せのための接見に際し,同所長が職員を立ち会わせたことが違法であるとして,国の上告を棄却した。その結果,国に対し,当会会員2名及び死刑確定者への国家賠償を命じた原審判決が確定した(この事件について,当会は,ほぼ同趣旨の第1審判決に際し,平成23年3月31日に会長声明を発している。)。これにより,再審請求前の弁護人と死刑確定者の秘密交通権侵害が,原則として違法となることが確定した。
また,平成25年10月25日には,広島高等裁判所第2部において,広島拘置所内で行われた,死刑確定者と再審請求手続の弁護人となろうとする者である当会会員2名(後にいずれも正式に弁護人となった。また,これらの死刑確定者及び当会会員はいずれも前記最高裁判決とは異なる)との再審請求打合せのための接見に際し,同所長が同所職員を立ち会わせたことが違法であるとして,国に対し,当会会員2名への国家賠償を命じた原審判決を維持する判決が言い渡されている。
これにより,再審請求前の弁護人となろうとする者と死刑確定者との秘密交通権侵害についても,違法とされていることとなる。
再審制度は,確定判決を受けた者について,新たな証拠に基づいて当該確定判決の誤りを是正し,無辜の者を救済することを目的とする,いわば刑事手続の最後の砦である。
そして,現在の再審制度においては,再審開始決定に至る以前の再審請求手続において,確定判決を覆すに足りる事情の存否が実質的に検討されるなど,再審開始決定に至るまでの過程が決定的に重要であり,再審請求手続における弁護人には,再審開始決定後の弁護人と何ら異ならない活動が必要とされている。
そのため,適正な再審制度の運用のためには,再審にあたって必要不可欠な弁護人との打合せのための接見の機会とその秘密性が十分に保障される必要がある。
したがって,受刑者・死刑確定者や再審請求の依頼を受けた弁護人及び弁護人となろうとする者(以下「弁護人等」という。)にとっては,再審請求手続及びその準備段階においても,刑事施設職員の立会のない秘密接見が認められなければ,再審請求に向けた適正な手続が保障されているとはいえない。
しかしながら,これまで,広島拘置所をはじめ多くの刑事施設では,再審開始決定確定前の受刑者・死刑確定者と弁護人等との接見について,秘密交通権の保障を前提とせず,原則として職員の立ち会いの下で行われるべきであるとして,刑事施設の長の裁量によって立会の必要性の有無を判断する運用が行われてきた。
そこで,当会は,全ての刑事施設に対し,上記最高裁判決及び高等裁判所判決において,死刑確定者と再審請求前の弁護人等との秘密交通権侵害を違法と判示されたことを真摯に受け止め,受刑者・死刑確定者と再審請求の依頼を受けた弁護人等との接見が,刑事施設職員の立会無く実施されることを,再度求める。

以上