声明・決議・意見書

会長声明2014.06.11

広島修道大学法科大学院の募集停止に関する会長声明

広島弁護士会
会長 舩木孝和

2014年(平成26年)5月27日,広島修道大学は,同大学大学院法務研究科法務専攻(広島修道大学法科大学院)の2015(平成27)年度入学者の募集を停止すると発表した。
同大学院は,法科大学院制度スタートの年である平成16年4月に中国・四国地方で唯一の私立法科大学院として開設され,当会としても,エクスターンシップの受け入れや当会主催の学習指導会の実施,奨学金NPO法人の設立による経済的支援など,全面的なバックアップを行ってきた。このたびの同大学の発表は誠に残念と言わざるを得ない。

現在,18校の法科大学院が募集停止(単独での募集停止を含む)を発表しているが,本年に入ってから,信州大学,新潟大学,久留米大学,鹿児島大学及び香川大学といった地方の法科大学院の募集停止が目立っている。

司法制度改革の三本の柱の1つである法曹養成制度改革は,従来の司法試験という「点」による法曹養成から,法科大学院教育という「プロセス」を通して多様で有能な法曹を養成することを目的として制度設計された。また、司法制度改革審議会意見書においても,法科大学院は「公平性,開放性,多様性の確保」を旨とする入学者選抜を行い,「地域を考慮した全国的な適正配置に配慮する」こととされている。日本弁護士連合会及び当会も,これまで繰り返し法科大学院の地域適正配置の重要性を訴えてきた。それは,各地の様々な階層から法曹を生み出すため,専門教育を受ける機会を実質的に確保することで,有為な人材が経済的事情や家庭の事情などで法曹への途を断念することがないよう配慮することのみにとどまらず,法科大学院の法律相談カリキュラムを通じた司法アクセスの充実,研究者と地方法曹の協同による教育や研究の充実など,地域司法の充実・発展にも繋がるものとして,「法の支配」を全国あまねく実現するために必要不可欠な理念だからである。

広島修道大学法科大学院は,「地域社会に貢献できる法曹の養成」の理念のもと,給付奨学金の充実や授業料の引き下げなどで経済的な事情で地元を離れられない法曹志望者のための制度を設けるなどし,これまで320人に及ぶ入学者を受け入れてきた。当会会員もその理念に賛同し実務家教員や非常勤講師として,その専門教育に携わってきたところである。また,同大学院を修了した司法試験合格者45名のうち24名が当会の会員となり地域司法の充実のため職務や弁護士会の会務に尽力しているところである。さらには,同大学院の修了生には,自治体や企業において法的知識を活かして活躍し,地域司法の充実・発展に寄与している者もおり,その教育能力及び学生の学習意欲は高く評価されるべきである。

ところで,文部科学省は,法科大学院の組織見直しを促進するための公的支援の見直しの更なる強化と称し,司法試験合格率や入学定員の充足率を中心とする指標によって,国立大学法人運営費交付金及び私立大学等経常費補助金の見直しを行っている。しかし,これでは法科大学院制度が法曹養成機関のプロセスとして位置づけられた制度趣旨に反することになるとともに,学生や教員の確保が困難な地方法科大学院がますます苦境に立たされ,地域適正配置の理念を後退させてしまうことになる。

そこで,当会は,国に対して,地方法科大学院に対して適正な公的支援が行われるよう早急な施策を求めるとともに,広島修道大学法科大学院が再び学生募集ができることを強く願いつつ,広く社会に対して法科大学院の地域適正配置の必要性を訴えるものである。

以上