会長声明2018.12.27
死刑執行に関する会長声明
内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
法務大臣 山下 貴司 殿
広島弁護士会
会長 前川秀雅
1 本日、大阪拘置所の死刑囚2名に対し死刑が執行された。今回の死刑執行は、本年7月に2回にわたり13名に対して執行されたのに続く本年3度目の執行であり、本年10月に山下貴司法相就任後は初の執行である。第2次安倍内閣以降で死刑が執行されたのは15回目で、合わせて36名が執行される事態となった。極めて遺憾であり、死刑執行について強く抗議する。
2 死刑は、生命を剥奪する刑罰であり、重大かつ究極的な人権制限である。ところが、こうした死刑を科す刑事司法制度は人が作り、人が運用する制度であって、誤判・冤罪の可能性が常に存在する。特に死刑については、誤った執行がなされた場合、権利回復を図ることは不可能であり、絶対に回避されなければならない。日本においても、4件の死刑確定事件において再審無罪が確定しており,冤罪による死刑執行という死刑制度がはらむ重大な問題が現実のものとして浮き彫りになっているのである。
3 また、死刑廃止は国際的な趨勢であり、2017年末現在、死刑廃止国及び事実上の廃止国は142か国に上り、死刑存置国は僅か56か国に過ぎない。OECD(経済協力開発機構)加盟国35か国で見ると、死刑を存置しているのは、日本、米国、韓国の3か国だけである。韓国は事実上の死刑廃止国であり、米国でも多くの州で死刑廃止ないし死刑の執行停止が宣言されていることからすれば、死刑を国家として統一的に執行しているのは日本だけである。
そして、日本政府は、国際人権(自由権)規約委員会から、2008年10月、総括所見において「締約国は、世論調査の結果にかかわらず、死刑の廃止を前向きに検討し、必要に応じて、国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきである。」等の勧告を受け、2014年7月23日には、「死刑の廃止を十分に考慮すること」等の勧告を受けている。さらに、2016年12月19日には、国連総会において、全ての死刑存置国に対し、死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の停止を求める決議が117か国の賛成多数で採択されている。
以上のような国際的な趨勢や国連関係機関からの死刑執行の停止・死刑制度廃止に向けた措置を検討する旨の勧告にもかかわらず、死刑制度を存置し、かつ死刑の執行を繰り返す日本政府の姿勢は際立っている。
4 日本弁護士連合会においても、前述のような死刑制度の問題点や国際的な趨勢等に鑑み、法務大臣に対し、再三に亘り要請書を提出し、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、今後の死刑制度の在り方について国民的議論が尽くされるまでの間全ての死刑の執行を停止すること等を求めてきた。さらに、2016年10月7日には、福井市で開催された第59回人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択している。同宣言は、犯罪により生命を奪われた被害者遺族の支援拡充を求めるとともに、人権を尊重する民主主義社会における刑罰制度は、犯罪への応報にとどまらず、社会復帰の達成に資するものでなければならないという観点から、死刑制度を含む刑罰制度全体の抜本的見直しを要請するものである。
5 当会は、このような死刑制度の問題や国際的な趨勢,国連関係機関の決議等を無視してなされた今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、日本政府が速やかに死刑の執行を停止し、死刑に関する情報を広く国民に公開し、死刑制度廃止を含む刑罰制度全体の見直しを早急に行うことを求める。
以上
内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
法務大臣 山下 貴司 殿
広島弁護士会
会長 前川秀雅
1 本日、大阪拘置所の死刑囚2名に対し死刑が執行された。今回の死刑執行は、本年7月に2回にわたり13名に対して執行されたのに続く本年3度目の執行であり、本年10月に山下貴司法相就任後は初の執行である。第2次安倍内閣以降で死刑が執行されたのは15回目で、合わせて36名が執行される事態となった。極めて遺憾であり、死刑執行について強く抗議する。
2 死刑は、生命を剥奪する刑罰であり、重大かつ究極的な人権制限である。ところが、こうした死刑を科す刑事司法制度は人が作り、人が運用する制度であって、誤判・冤罪の可能性が常に存在する。特に死刑については、誤った執行がなされた場合、権利回復を図ることは不可能であり、絶対に回避されなければならない。日本においても、4件の死刑確定事件において再審無罪が確定しており,冤罪による死刑執行という死刑制度がはらむ重大な問題が現実のものとして浮き彫りになっているのである。
3 また、死刑廃止は国際的な趨勢であり、2017年末現在、死刑廃止国及び事実上の廃止国は142か国に上り、死刑存置国は僅か56か国に過ぎない。OECD(経済協力開発機構)加盟国35か国で見ると、死刑を存置しているのは、日本、米国、韓国の3か国だけである。韓国は事実上の死刑廃止国であり、米国でも多くの州で死刑廃止ないし死刑の執行停止が宣言されていることからすれば、死刑を国家として統一的に執行しているのは日本だけである。
そして、日本政府は、国際人権(自由権)規約委員会から、2008年10月、総括所見において「締約国は、世論調査の結果にかかわらず、死刑の廃止を前向きに検討し、必要に応じて、国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきである。」等の勧告を受け、2014年7月23日には、「死刑の廃止を十分に考慮すること」等の勧告を受けている。さらに、2016年12月19日には、国連総会において、全ての死刑存置国に対し、死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の停止を求める決議が117か国の賛成多数で採択されている。
以上のような国際的な趨勢や国連関係機関からの死刑執行の停止・死刑制度廃止に向けた措置を検討する旨の勧告にもかかわらず、死刑制度を存置し、かつ死刑の執行を繰り返す日本政府の姿勢は際立っている。
4 日本弁護士連合会においても、前述のような死刑制度の問題点や国際的な趨勢等に鑑み、法務大臣に対し、再三に亘り要請書を提出し、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、今後の死刑制度の在り方について国民的議論が尽くされるまでの間全ての死刑の執行を停止すること等を求めてきた。さらに、2016年10月7日には、福井市で開催された第59回人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択している。同宣言は、犯罪により生命を奪われた被害者遺族の支援拡充を求めるとともに、人権を尊重する民主主義社会における刑罰制度は、犯罪への応報にとどまらず、社会復帰の達成に資するものでなければならないという観点から、死刑制度を含む刑罰制度全体の抜本的見直しを要請するものである。
5 当会は、このような死刑制度の問題や国際的な趨勢,国連関係機関の決議等を無視してなされた今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、日本政府が速やかに死刑の執行を停止し、死刑に関する情報を広く国民に公開し、死刑制度廃止を含む刑罰制度全体の見直しを早急に行うことを求める。
以上