声明・決議・意見書

意見書2011.09.22

子ども・若者育成支援推進法に基づく計画作成及び施策の実施を求める意見書(2/2)

8 次に,県下地方公共団体の動きをみると,当会子どもの権利委員会で調査した結果,2011(平成23)年6月20日時点で,県内23市町のうち14市町は(残る9市町は未回答)支援計画を作成していなかった。この14市町のうち,今後の作成予定について,「予定あり」と回答した自治体は2,「検討中」と回答した自治体は2,「予定なし」と回答した自治体は6,「未定」と回答した自治体は4だった。
子ども・若者を取り巻く問題は地域によって多様かつ複雑であり,家庭・学校・職域・地域等が相互に協力して一体となって取り組む必要がある。そのため,子若法は,都道府県のみならず市町村に対しても,支援計画を作成する努力義務を課し,計画作成後も,地域社会の構成員に対する積極的な啓発(同法第10条),社会環境の整備(同法第11条)等に取り組むべきとした。
よって,同法の趣旨を実現すべく,県下地方公共団体は,速やかに別紙記載の施策を盛り込んだ支援計画を作成すべきである。

9 なお,次世代法と子若法は趣旨が一部重複することから,内閣府は地方公共団体に対し,次世代法に基づく行動計画の中で,子若法に基づく施策の方針等を定める場合も支援計画を作成したことになる,と通知した。
かかる通知をふまえ,行動計画と別に支援計画を作成する必要がないと認識している自治体もあるが,次世代法は子どもの育成支援に重点を置いており,0歳から30歳までの子ども・若者の最善の利益を図り,その成長・発達を支援するという子若法の趣旨を網羅しているわけではない。
よって,行動計画の中で子若法に基づく施策の方針等を定めた県下地方公共団体は,その計画内容が子若法の趣旨に沿っているかを検証し,別紙記載の施策を盛り込む方向で必要な改定をすべきである。

10 最後に,広島県及び県下地方公共団体は,子ども・若者をめぐる問題が深刻な状況にあることを踏まえ,支援計画に基づき,子ども・若者育成支援施策を速やかに実施すべきである。
実施に際しては,「子ども・若者総合相談センター」(子若法第13条)・「子ども・若者支援協議会」(同第19条)・「子ども・若者支援調整機関」(同第21条)・「子ども・若者指定支援機関」(同第22条)を設置又は指定し,その活動を通して関係機関相互の密接な連携を図り,民間の団体及び国民一般の理解と協力の下,関連分野の知見を結集して総合的な取り組みをすべきである。
当会は,支援計画の策定及び実施にあたっては,助言等の必要な協力をする意向である。

11 以上から,当会は,頭書の通り意見を述べる次第である。

(別紙)

1 修学援助としての経済支援
2 スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の相談体制の整備
3 地域における,子どもの発育・発達や心の健康問題,薬物乱用,性,感染症等に関する相談の充実や,医療機関による対応の充実
4 困難を有する子ども・若者に対し,教育,福祉,保健,医療,矯正,更生保護,雇用などの様々な機関がネットワークを形成し,それぞれの専門性を生かした発達段階に応じた支援を行っていく体制づくり
5 学校,保育所等の公的施設を活用して,子ども一人一人に対して教育や福祉関係者,地域のボランティアなどが連携し,生活面での支援,学習面での支援,家庭への支援などを行う取組
6 更生保護施設や自立援助ホームの充実等を図るとともに,関係機関,学校,民間協力者,地域の人々等が連携して行う居場所づくりを始めとした多様な立ち直り支援
7 児童養護施設等において,小規模グループケア及び地域小規模児童養護施設の設置を推進し,要保護児童の成長に寄り添うケアを充実させること
8 児童養護施設等を出た後に修学・就労を目指す子ども・若者が生活できるグループホーム等の居場所づくりの支援
9 公立学校における日本語指導体制の整備とバイリンガルの人材の配置等
10 十代で親になる者に対し,妊娠に伴う学業の継続支援や,出産や子育ての知識や経験の不足に対する相談,支援の整備
11 要保護児童対策地域協議会の機能強化と,児童福祉司等の人員及び専門性の確保などによる児童相談所の体制強化
12 里親や小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)の拡充などの家庭的養護の促進や,施設機能の見直しなどの社会的養護の充実
13 犯罪被害に遭った子ども・若者に対する,専門職員等による継続的な支援活動の推進と,関係機関等が連携して行う相談,訪問活動や環境調整等の支援
14 保護者や地域住民が学校運営に参画し,学校づくりを進めるコミュニティ・スクールの設置促進
15 使命感,得意分野,個性を持ち,現場の課題に適切に対応できる力量ある教員の確保
16 総合的な放課後児童対策の推進
17 中学生や高校生が,放課後,安全に楽しく過ごせる居場所づくり
18 オンブズパーソン等の第三者的立場から,子ども・若者やその家族等の相談を受け,必要な調査を行うとともに,関係機関等と調整を行いながら問題を解決する仕組みの普及
19 同世代又は年齢が近い世代の学生ボランティアの導入の推進や,価値観を共有する仲間によるボランティアの活動の促進
20 子ども・若者に対する支援を同世代の子ども・若者が行う等,子ども・若者自身のネットワークの形成や強化のための支援

以上