声明・決議・意見書

会長声明2020.10.26

核兵器禁止条約への署名及び批准を求める会長声明

 

2020年(令和2年)10月26日

 

広島弁護士会 会長  足立 修一

 

第1 声明の趣旨

当会は、核兵器禁止条約の批准国が50か国に達し、同条約が発効する流れとなったことを歓迎するとともに、日本政府に対しても、速やかに核兵器禁止条約に署名した上で、同条約を批准するよう求める。

 

第2 声明の理由

1 本年は、広島及び長崎に原爆が投下されてから75周年、核兵器不拡散条約(NPT)が発効してから50周年という節目の年に当たる。

2017年(平成29年)7月、国連において122か国の賛成の下に核兵器禁止条約が採択され、50か国の批准後90日で同条約が発効するところ、本年10月24日(現地時間)、50か国が批准したことにより、2021年1月22日(現地時間)に同条約が発効することとなった。

核兵器禁止条約の前文では、「核兵器の使用による犠牲者(ヒバクシャ)や核実験による被害者にもたらされた受け入れがたい苦痛と被害」に言及し、「いかなる核兵器の使用も国際法の規定、特に国際人道法の原則及び規則に違反すること」が確認されている。

2 現在、日本政府は「北朝鮮のように核兵器の使用をほのめかす相手に対しては通常兵器だけでは抑止を効かせることは困難であるため、日米同盟の下で核兵器を有する米国の抑止力を維持することが必要」として、「核兵器を直ちに違法化する条約に参加すれば、米国による核抑止力の正当性を損ない、国民の生命・財産を危険に晒すことを容認することになりかねず、日本の安全保障にとっての問題を惹起します」などの理由で、核兵器禁止条約には署名しない立場をとっている。

しかし、この核抑止論は、その抑止が崩れると核兵器が使用され、人類が滅亡する危険性を有し、また、意図的ではなくとも、人為的ミスや誤作動により核兵器が使用される可能性もある。

核兵器禁止条約は、「核兵器の開発、実験、製造、備蓄、移譲、使用及び威嚇としての使用の禁止ならびにその廃絶」によって、核兵器が存在する限り生じる危険性を一切排除しようとするものであって、合理性と正当性が認められる。

3 日本は、広島と長崎の被爆、そしてビキニ環礁における核実験被害を体験した世界唯一の被爆国であり、二度と同様の経験を人類に与えることのないようその役割を果たすべき責務がある。そのためには、日本は、速やかにこの条約に署名し、批准すべきである。

それが、日本国憲法前文が規定する「われらは、平和を維持し、専制と隷属、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において名誉ある地位を占める」ことにつながるはずである。

4 当会は、被爆者たちに「安らかに眠ってください。過ちは二度と繰り返しませんから」と誓った被爆地広島の弁護士会として、核兵器禁止条約の批准国が50か国に達し、同条約が発効する流れとなったことを歓迎するとともに、日本政府に対し、速やかに核兵器禁止条約の署名及び批准をするよう求める。

そして、当会は、今後も、被爆者及び核兵器廃絶により平和を願う市民らとともに、核兵器のない社会の実現のために努力することを誓う。

 

以上