会長声明2021.07.14
最低賃金額の引上げを求める会長声明
2021年(令和3年)7月14日
広島弁護士会会長 池 上 忍
第1 声明の趣旨
1 当会は,中央最低賃金審議会に対し,2021年度(令和3年度)地域別最低賃金額改定の目安についての答申において,目安を引き上げることによって地域別最低賃金額の引上げを促すことを求める。
2 当会は,広島地方最低賃金審議会に対し,主体的に2021年度(令和3年度)地域別最低賃金額の引上げを図ることを求める。
第2 声明の理由
1 中央最低賃金審議会は,近々,厚生労働大臣に対し,地域別最低賃金額改定の目安についての答申を行う予定である。その後,この目安答申を受けて各都道府県地方最低賃金審議会においても調査・審議を経て,賃金額改定の答申がされ,これを踏まえ各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定することとなる。
2 中央最低賃金審議会は,これまで,毎年のように地域別最低賃金額の引上げ額の目安を答申していたが,2020年(令和2年)度は,目安額の提示を見送った。
これは,新型コロナウイルスの感染拡大により,経営基盤が脆弱な多くの中小企業が倒産,廃業に追い込まれる懸念が広がる中,最低賃金の引上げが企業経営に与える影響を重視して引上げを抑制すべきという議論が多数を占めたことを理由とするが,これを受けて,各地の審議会も引上げ額を抑制し,2020年(令和2年)度は,広島県を含む7都道府県が引上げなしとなり,他の地域も1円ないし3円の引上げにとどまった。
そのため,2020年(令和2年)度の広島県の最低賃金額は,2019年(令和元年)度の871円が据え置かれたままであり,この金額は,1日8時間,週40時間働いたとしても月収約15万3300円,年収で約184万円にしかならない。これでは労働者が賃金だけで人間らしい生活を持続的に営むことはできないばかりか,すべての労働者を不当に低い賃金から保護する安全網(セーフティネット)としての最低賃金制度の目的を果たしていない。
3 最低賃金法は,第1条において,「賃金の低廉な労働者について,賃金の最低額を保障すること」によって「労働者の生活の安定,労働力の質的向上」に資することを目的とする旨を明示しているところ,このような現状を踏まえれば,最低賃金制度をすべての労働者を不当に低い賃金から保護する安全網(セーフティネット)として真に実効的に機能させることが必要不可欠である。
そのためには,人間らしい生活を持続的に営むことができるよう,また,労働者の生活を守り,新型コロナウイルス感染症に向き合いながら経済を活性化させるためにも,これまでの最低賃金額引上げの流れを後退させてはならない。
4 この点,2021年(令和3年)6月18日,「経済財政運営と改革の基本方針2021 日本の未来を拓く4つの原動力 ~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~」(骨太方針2021)が、経済財政諮問会議での答申を経て閣議決定されたが、同方針には、「最低賃金について、感染症下でも最低賃金を引き上げてきた諸外国の取組も参考にして、感染症拡大前に我が国で引き上げてきた実績を踏まえて、地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国加重平均1000円とすることを目指し、本年の引上げに取り組む」ことが明記されている。
新型コロナウイルス感染症により,中小零細企業は厳しい状況に置かれているが,労働者もまた,従前よりさらに厳しい状況に置かれている。最低賃金額の引上げの実施は,労働者やその家族の命に関わる重要な課題である。
国民経済の健全な発展には,中小零細企業への支援策を充実させると同時に最低賃金額の引上げを図ることが肝要であり,前述した「骨太方針2021」は、まさにこの点を意識した内容となっている。
5 よって,当会は,労働者の生活の安定,労働力の質的向上及び国民経済の健全な発展への寄与という最低賃金法の目的を達するため,改めて,中央最低賃金審議会に対し,今回の答申において目安を引き上げることによって地域別最低賃金額の引き上げを促すことを求めるとともに,広島地方最低賃金審議会に対し,主体的に地域別最低賃金額の引上げを図ることを求める。
以上
2021年(令和3年)7月14日
広島弁護士会会長 池 上 忍
第1 声明の趣旨
1 当会は,中央最低賃金審議会に対し,2021年度(令和3年度)地域別最低賃金額改定の目安についての答申において,目安を引き上げることによって地域別最低賃金額の引上げを促すことを求める。
2 当会は,広島地方最低賃金審議会に対し,主体的に2021年度(令和3年度)地域別最低賃金額の引上げを図ることを求める。
第2 声明の理由
1 中央最低賃金審議会は,近々,厚生労働大臣に対し,地域別最低賃金額改定の目安についての答申を行う予定である。その後,この目安答申を受けて各都道府県地方最低賃金審議会においても調査・審議を経て,賃金額改定の答申がされ,これを踏まえ各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定することとなる。
2 中央最低賃金審議会は,これまで,毎年のように地域別最低賃金額の引上げ額の目安を答申していたが,2020年(令和2年)度は,目安額の提示を見送った。
これは,新型コロナウイルスの感染拡大により,経営基盤が脆弱な多くの中小企業が倒産,廃業に追い込まれる懸念が広がる中,最低賃金の引上げが企業経営に与える影響を重視して引上げを抑制すべきという議論が多数を占めたことを理由とするが,これを受けて,各地の審議会も引上げ額を抑制し,2020年(令和2年)度は,広島県を含む7都道府県が引上げなしとなり,他の地域も1円ないし3円の引上げにとどまった。
そのため,2020年(令和2年)度の広島県の最低賃金額は,2019年(令和元年)度の871円が据え置かれたままであり,この金額は,1日8時間,週40時間働いたとしても月収約15万3300円,年収で約184万円にしかならない。これでは労働者が賃金だけで人間らしい生活を持続的に営むことはできないばかりか,すべての労働者を不当に低い賃金から保護する安全網(セーフティネット)としての最低賃金制度の目的を果たしていない。
3 最低賃金法は,第1条において,「賃金の低廉な労働者について,賃金の最低額を保障すること」によって「労働者の生活の安定,労働力の質的向上」に資することを目的とする旨を明示しているところ,このような現状を踏まえれば,最低賃金制度をすべての労働者を不当に低い賃金から保護する安全網(セーフティネット)として真に実効的に機能させることが必要不可欠である。
そのためには,人間らしい生活を持続的に営むことができるよう,また,労働者の生活を守り,新型コロナウイルス感染症に向き合いながら経済を活性化させるためにも,これまでの最低賃金額引上げの流れを後退させてはならない。
4 この点,2021年(令和3年)6月18日,「経済財政運営と改革の基本方針2021 日本の未来を拓く4つの原動力 ~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~」(骨太方針2021)が、経済財政諮問会議での答申を経て閣議決定されたが、同方針には、「最低賃金について、感染症下でも最低賃金を引き上げてきた諸外国の取組も参考にして、感染症拡大前に我が国で引き上げてきた実績を踏まえて、地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国加重平均1000円とすることを目指し、本年の引上げに取り組む」ことが明記されている。
新型コロナウイルス感染症により,中小零細企業は厳しい状況に置かれているが,労働者もまた,従前よりさらに厳しい状況に置かれている。最低賃金額の引上げの実施は,労働者やその家族の命に関わる重要な課題である。
国民経済の健全な発展には,中小零細企業への支援策を充実させると同時に最低賃金額の引上げを図ることが肝要であり,前述した「骨太方針2021」は、まさにこの点を意識した内容となっている。
5 よって,当会は,労働者の生活の安定,労働力の質的向上及び国民経済の健全な発展への寄与という最低賃金法の目的を達するため,改めて,中央最低賃金審議会に対し,今回の答申において目安を引き上げることによって地域別最低賃金額の引き上げを促すことを求めるとともに,広島地方最低賃金審議会に対し,主体的に地域別最低賃金額の引上げを図ることを求める。
以上