会長声明2021.08.12
夫婦同姓強制を認める最高裁判所大法廷決定を受けて、改めて民法750条を改正し、選択的夫婦別姓制度を導入することを求める会長声明
2021年(令和3年)8月11日
広島弁護士会 会長 池 上 忍
第1 声明の趣旨
当会は、改めて国に対し、速やかに、民法第750条を改正し、選択的夫婦別姓制度を導入することを強く求める。
第2 声明の理由
1、2021年(令和3年)6月23日、最高裁判所大法廷は、夫婦同姓を強制する民法第750条、及び、これを受けて夫婦の姓を届け出ることを規定した戸籍法第74条1号について、憲法第24条に違反しないとする決定を下した。さらに、同月24日、最高裁判所第一小法廷は、夫婦別姓による婚姻届出を不受理とした処分が争われた家事審判事件について特別抗告を棄却し、両規定は憲法第14条1項、第24条に違反しないとする2020年(令和2年)9月16日付広島高等裁判所の審判が確定した。今回の大法廷決定において、多数意見は2015年(平成27年)12月16日最高裁判決を引用して両規定を合憲としたものの、他方で4人の裁判官が両規定は憲法24条に違反するとの意見を付したことは評価できる。
2、姓は個人のアイデンティティを表す名前の一部であり、婚姻前の姓を名乗るという選択は尊重されるべきである。民法第750条及び戸籍法第74条1号が定める夫婦同姓強制は、憲法第13条及び同第24条第2項が保障する個人の尊厳、同第24条第1項及び同第13条が保障する婚姻の自由、同第14条1項が保障する法の下の平等、同第24条第2項が保障する両性の平等並びに女性差別撤廃条約第16条第1項(b)の規定が保障する「自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利」及び同項(g)の規定が保障する「夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)」を侵害するものである。
3、法制審議会は、1996年(平成8年)に「民法の一部を改正する法律案要綱」を総会で決定し、選択的夫婦別姓制度の導入を答申した。また、国連の女性差別撤廃委員会は夫婦同姓を強制する民法第750条について、日本政府に対し重ねて改正するよう勧告を行ってきた。法制審議会の答申から25年、女性差別撤廃条約の批准から36年が経ち、内閣府実施の世論調査(「家族の法制に関する世論調査」)においても選択的夫婦別姓制度の導入について、2017年(平成29年)には賛成多数が明確になったにもかかわらず、国会は、上記各規定を放置してきた。
4、最高裁判所は、2015年(平成27年)12月16日付け大法廷判決において、選択的夫婦別姓制度については「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならない」と指摘したが、今回の大法廷決定においても、同様に重ねて指摘した。国会は、最高裁大法廷が2度にわたり、国会の議論を求めていることを重く受け止めるべきである。
5、当会はこれまで、2010年(平成22年)3月、2015年(平成27年)4月、及び2015年(平成27年)12月の会長声明を発出し、夫婦同姓を強制する民法第750条を改正し、選択的夫婦別姓制度を導入すべきである旨を述べてきたところであるが、今回の最高裁大法廷決定を受け、当会は、改めて国に対し、速やかに、民法第750条を改正し、選択的夫婦別姓制度を導入することを強く求める。
以上
2021年(令和3年)8月11日
広島弁護士会 会長 池 上 忍
第1 声明の趣旨
当会は、改めて国に対し、速やかに、民法第750条を改正し、選択的夫婦別姓制度を導入することを強く求める。
第2 声明の理由
1、2021年(令和3年)6月23日、最高裁判所大法廷は、夫婦同姓を強制する民法第750条、及び、これを受けて夫婦の姓を届け出ることを規定した戸籍法第74条1号について、憲法第24条に違反しないとする決定を下した。さらに、同月24日、最高裁判所第一小法廷は、夫婦別姓による婚姻届出を不受理とした処分が争われた家事審判事件について特別抗告を棄却し、両規定は憲法第14条1項、第24条に違反しないとする2020年(令和2年)9月16日付広島高等裁判所の審判が確定した。今回の大法廷決定において、多数意見は2015年(平成27年)12月16日最高裁判決を引用して両規定を合憲としたものの、他方で4人の裁判官が両規定は憲法24条に違反するとの意見を付したことは評価できる。
2、姓は個人のアイデンティティを表す名前の一部であり、婚姻前の姓を名乗るという選択は尊重されるべきである。民法第750条及び戸籍法第74条1号が定める夫婦同姓強制は、憲法第13条及び同第24条第2項が保障する個人の尊厳、同第24条第1項及び同第13条が保障する婚姻の自由、同第14条1項が保障する法の下の平等、同第24条第2項が保障する両性の平等並びに女性差別撤廃条約第16条第1項(b)の規定が保障する「自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利」及び同項(g)の規定が保障する「夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)」を侵害するものである。
3、法制審議会は、1996年(平成8年)に「民法の一部を改正する法律案要綱」を総会で決定し、選択的夫婦別姓制度の導入を答申した。また、国連の女性差別撤廃委員会は夫婦同姓を強制する民法第750条について、日本政府に対し重ねて改正するよう勧告を行ってきた。法制審議会の答申から25年、女性差別撤廃条約の批准から36年が経ち、内閣府実施の世論調査(「家族の法制に関する世論調査」)においても選択的夫婦別姓制度の導入について、2017年(平成29年)には賛成多数が明確になったにもかかわらず、国会は、上記各規定を放置してきた。
4、最高裁判所は、2015年(平成27年)12月16日付け大法廷判決において、選択的夫婦別姓制度については「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならない」と指摘したが、今回の大法廷決定においても、同様に重ねて指摘した。国会は、最高裁大法廷が2度にわたり、国会の議論を求めていることを重く受け止めるべきである。
5、当会はこれまで、2010年(平成22年)3月、2015年(平成27年)4月、及び2015年(平成27年)12月の会長声明を発出し、夫婦同姓を強制する民法第750条を改正し、選択的夫婦別姓制度を導入すべきである旨を述べてきたところであるが、今回の最高裁大法廷決定を受け、当会は、改めて国に対し、速やかに、民法第750条を改正し、選択的夫婦別姓制度を導入することを強く求める。
以上