声明・決議・意見書

会長声明2022.08.10

国民審査の在外投票を認めない国民審査法を違憲とした最高裁大法廷判決についての会長声明

広島弁護士会 会長 久 笠 信 雄
2022年(令和4年)8月10日

第1 声明の趣旨

当会は、国会に対し、速やかに在外国民が国民審査権を行使することが可能になるような立法措置を講ずることを求める。

 

第2 声明の理由

2022年(令和4年)5月25日、最高裁判所大法廷は、最高裁判所裁判官の国民審査について、最高裁判所裁判官国民審査法(以下「国民審査法」という。)が在外国民に審査権の行使を認める規定を欠いていることは、憲法15条1項、79条2項、3項に違反するとする判決を言い渡した。立法府の立法不作為により国が国家賠償法上の賠償責任を負うことを認めた画期的な違憲判決である。

本最高裁判決は、国民の審査権またはその行使を制限することは原則として許されず、制限にはやむを得ないと認められる事由がなければならないとした上で、在外国民に審査権の行使を認める制度(在外審査制度)の創設に当たり検討すべき課題があったとしても、そのための立法措置が何らとられていないことについて、やむを得ない事由があるとは到底いうことができないとした。

国民審査制度は、最高裁判所に民主的コントロールを及ぼす唯一の手段であるとともに、国会議員を選出する選挙権と並ぶ主権者たる国民による公務員の選定罷免権(憲法第15条第1項)の現れである。国会議員を選出する選挙権について、2005(平成17年)9月14日の最高裁判所大法廷の違憲判決を受けて公職選挙法が改正されて在外投票制度が整備されたことをみれば、国民審査について同様の立法措置がなされていない状況が続いていたことは在外国民の憲法上の権利を侵害している立法不作為は明らかである。

当会は、国民審査制度の重要性を示すとともに、国民審査制度の趣旨として最高裁の違憲立法審査権の行使が国家行為の合憲性をコントロールするものであることに触れ、これを適切に行使した本最高裁判決を高く評価し、今後も最高裁判所が違憲立法審査権の行使に消極的にならないことを期待するとともに、国会に対し、速やかに在外国民が国民審査権を行使することが可能となる立法措置を講ずることを求める。

 

以上