会長声明2024.01.22
核兵器禁止条約発効3年を機に、改めて核兵器の廃絶の推進を求める会長声明
広島弁護士会会長 坂 下 宗 生
1 2022年2月のロシアによるウクライナに対する軍事侵攻、また、2023年月10月のイスラエルによるガザ地区侵攻の過程で、核兵器を保有する国から核兵器の使用またはその威嚇が唱えられ、核戦争の危機がこれまでになく強まっている。
日本国民は、広島及び長崎への原爆投下によって、核戦争が非人道的な結末を招来させることを知り、また、その被害が今もなお続いていることを経験してきた。この広島及び長崎への原爆投下によって、日本人のみならず朝鮮半島出身者及び連合国の捕虜などもこの原爆の犠牲になっている。
2 当会は、韓国の大邱地方弁護士会と友好協定を締結し、毎年、交流を続けている。大邱広域市の近郊には、多くの在韓被爆者が居住しているハプチョン(陜川)があり、そこは「韓国のヒロシマ」と呼ばれている。当会はこの交流を通じて、在韓被爆者とも交流してきた。
大邱地方弁護士会は、本年1月の核兵器禁止条約発効3年を機に、韓国政府に対して、同条約に参加するよう求める声明を出す予定である。
3 当会もこれまで、被爆地の弁護士会として、核兵器廃絶を求める活動を継続しており、核兵器禁止条約については、2020年10月に同条約の発効が確定した際、これを歓迎し、日本政府も同条約を署名批准することを求める会長声明を発出し、その後2023年G7広島サミットの際にも同趣旨の会長声明を発出してきた。
4 核兵器禁止条約は、2024年1月18日現在、署名国は93か国、批准国は70か国であり、2023年11月27日から12月1日までの間、第2回締約国会議がニューヨークで開催された。同会議において「核兵器の近代化や世界情勢の緊張の高まりで、核のリスクはいっそう悪化している」としたうえ、「核による威嚇は、国際法に違反し世界の平和と安全を損なうだけだ」との宣言が採択された。
そして、日本世論調査会が2023年に実施した調査では、国民の61%が核兵器禁止条約に参加すべきだと回答している。
しかし岸田首相は、「核兵器禁止条約は核兵器のない世界への出口として重要」と明言しながらも、現時点では安全保障の見地から核兵器禁止条約には署名・批准しない立場をとっている。
5 当会は、この経緯に鑑み、改めて日本政府に対し、速やかに核兵器禁止条約に署名及び批准するよう求めるともに、締約国会議が開催された場合、たとえ未署名であるとしても、オブザーバーとして参加したうえ、保有国が核廃絶に取組むよう橋渡しする等の積極的な関与を求める。
そして、思いを同じくする大邱地方弁護士会とともに、当会は今後も、被爆者、核兵器廃絶を願う日本や韓国、及び世界の市民と手を結び、核兵器のない平和な社会の実現のために努力することを誓うものである。
以上
広島弁護士会会長 坂 下 宗 生
1 2022年2月のロシアによるウクライナに対する軍事侵攻、また、2023年月10月のイスラエルによるガザ地区侵攻の過程で、核兵器を保有する国から核兵器の使用またはその威嚇が唱えられ、核戦争の危機がこれまでになく強まっている。
日本国民は、広島及び長崎への原爆投下によって、核戦争が非人道的な結末を招来させることを知り、また、その被害が今もなお続いていることを経験してきた。この広島及び長崎への原爆投下によって、日本人のみならず朝鮮半島出身者及び連合国の捕虜などもこの原爆の犠牲になっている。
2 当会は、韓国の大邱地方弁護士会と友好協定を締結し、毎年、交流を続けている。大邱広域市の近郊には、多くの在韓被爆者が居住しているハプチョン(陜川)があり、そこは「韓国のヒロシマ」と呼ばれている。当会はこの交流を通じて、在韓被爆者とも交流してきた。
大邱地方弁護士会は、本年1月の核兵器禁止条約発効3年を機に、韓国政府に対して、同条約に参加するよう求める声明を出す予定である。
3 当会もこれまで、被爆地の弁護士会として、核兵器廃絶を求める活動を継続しており、核兵器禁止条約については、2020年10月に同条約の発効が確定した際、これを歓迎し、日本政府も同条約を署名批准することを求める会長声明を発出し、その後2023年G7広島サミットの際にも同趣旨の会長声明を発出してきた。
4 核兵器禁止条約は、2024年1月18日現在、署名国は93か国、批准国は70か国であり、2023年11月27日から12月1日までの間、第2回締約国会議がニューヨークで開催された。同会議において「核兵器の近代化や世界情勢の緊張の高まりで、核のリスクはいっそう悪化している」としたうえ、「核による威嚇は、国際法に違反し世界の平和と安全を損なうだけだ」との宣言が採択された。
そして、日本世論調査会が2023年に実施した調査では、国民の61%が核兵器禁止条約に参加すべきだと回答している。
しかし岸田首相は、「核兵器禁止条約は核兵器のない世界への出口として重要」と明言しながらも、現時点では安全保障の見地から核兵器禁止条約には署名・批准しない立場をとっている。
5 当会は、この経緯に鑑み、改めて日本政府に対し、速やかに核兵器禁止条約に署名及び批准するよう求めるともに、締約国会議が開催された場合、たとえ未署名であるとしても、オブザーバーとして参加したうえ、保有国が核廃絶に取組むよう橋渡しする等の積極的な関与を求める。
そして、思いを同じくする大邱地方弁護士会とともに、当会は今後も、被爆者、核兵器廃絶を願う日本や韓国、及び世界の市民と手を結び、核兵器のない平和な社会の実現のために努力することを誓うものである。
以上