会長声明2024.12.18
子どもの権利条約に基づく子どもの権利保障を推進する会長声明
2024年(令和6年)12月18日
広島弁護士会 会長 大植 伸
第1 声明の趣旨
当会は、子どもの権利条約批准30周年を機に、子どもの権利条約に基づく子どもの権利が保障され、子どもたちが心身ともに伸びやかに育ち、子どもたちが自らの人生を自らのものとして生きていける社会の実現に向けて、市民の皆さまとともに尽力することを宣言します。
第2 声明の理由
1 子どもの権利条約(以下「本条約」といいます。)は、1989年(平成元年)に国連で採択されて35周年、1994年(平成6年)に日本が批准して30周年を迎えます。
本条約は、従来保護の対象(客体)と扱われていた子どもを、権利の主体として尊重するよう、子ども観の転換を謳っています。そして、差別の禁止、子どもの最善の利益、成長・発達する権利、意見を表明する権利(意向や思いを聴かれる権利)の4つの原則を基軸として、子どもの権利保障が実現されることを求めています。
日本では、本条約批准から長い間、本条約の趣旨を具体化する包括的な国内法がありませんでしたが、2023年(令和5年)にようやく「こども基本法」が施行され、本条約の趣旨に基づく社会の実現へ歩みが進められています。
しかし今もなお、児童虐待、いじめ及び体罰等の暴力(精神的暴力、性暴力等を含みます)や暴力による威嚇等のために、子どもたちが暮らす家庭、学校そして地域において、子どもの権利の保障が十全とは言えない状況は続いています。こども基本法においても、種々の立場のおとなの責務を定め、子どもの権利を基盤に据えたこども施策を実施することが求められているといえます。
2 子どもの権利を基盤に据えることは、子どもに関する事柄を進めるにあたって、常に子どもの最善の利益とは何かを探求し続けることにつながります。また、子どもが意見(意向や思い)を表明できる場合には、それらを受け止め、相応に尊重しなければなりません(意見表明権の保障、本条約12条)。子どもたちの中には、自分の思いをきちんと聴いてもらえた経験が少ない子、思いを踏みにじられ本心をいわなくなった子、現実の厳しさから考えることを諦めたようにみえる子もいます。そうした子どもたちと関係をつなげ、徐々に芽生えた思いや気持ちを受け止め、その思いを一緒にかたち(ことば)にしていくこと(意見形成支援)、その思いの表明を手伝うこと(意見表明支援)も、子どもの意見表明権の保障の内容をなすものです。こうした意見表明支援の取組みは、社会的養護を必要とする子どもについて制度化されましたが、それに留まらず全ての子どもに対し行われていくべきものと考えます。
また、子どもに対する権利侵害が具体的に認められる場合には、その権利回復のために子どもに寄り添って対応をしていく必要があり、そうしたオンブズパースン等の相談・権利救済機関の設置も必要です。この点こども大綱においても、「こどもの権利が侵害された場合の救済機関として、地方公共団体が設置するオンブズパーソン等の相談救済機関の実態把握や事例の周知」を行うこととされ、その取組を国が後押しすることとされています。全国では約50の地方公共団体に設置されていますが、広島県内には未だ設置された地方公共団体はありません。
3 当会は、これまでも、子どもの権利保障の進展を目指し、子ども電話相談、いじめ予防授業の実施、スクールロイヤーの派遣、子どもシェルターの運営支援、子どもの手続代理人や少年事件における付添人の活動、こどもの日記念イベントにおける子どもの権利の普及啓発等、種々の活動を続けてきました。
当会は、声明の趣旨で述べたとおり、今後も、本条約に基づく子どもの権利が保障され、子どもたちが心身ともに伸びやかに育ち、子どもたちが自らの人生を自らのものとして生きていける社会の実現に向けて、市民の皆さまとともに尽力してまいります。
以上
2024年(令和6年)12月18日
広島弁護士会 会長 大植 伸
第1 声明の趣旨
当会は、子どもの権利条約批准30周年を機に、子どもの権利条約に基づく子どもの権利が保障され、子どもたちが心身ともに伸びやかに育ち、子どもたちが自らの人生を自らのものとして生きていける社会の実現に向けて、市民の皆さまとともに尽力することを宣言します。
第2 声明の理由
1 子どもの権利条約(以下「本条約」といいます。)は、1989年(平成元年)に国連で採択されて35周年、1994年(平成6年)に日本が批准して30周年を迎えます。
本条約は、従来保護の対象(客体)と扱われていた子どもを、権利の主体として尊重するよう、子ども観の転換を謳っています。そして、差別の禁止、子どもの最善の利益、成長・発達する権利、意見を表明する権利(意向や思いを聴かれる権利)の4つの原則を基軸として、子どもの権利保障が実現されることを求めています。
日本では、本条約批准から長い間、本条約の趣旨を具体化する包括的な国内法がありませんでしたが、2023年(令和5年)にようやく「こども基本法」が施行され、本条約の趣旨に基づく社会の実現へ歩みが進められています。
しかし今もなお、児童虐待、いじめ及び体罰等の暴力(精神的暴力、性暴力等を含みます)や暴力による威嚇等のために、子どもたちが暮らす家庭、学校そして地域において、子どもの権利の保障が十全とは言えない状況は続いています。こども基本法においても、種々の立場のおとなの責務を定め、子どもの権利を基盤に据えたこども施策を実施することが求められているといえます。
2 子どもの権利を基盤に据えることは、子どもに関する事柄を進めるにあたって、常に子どもの最善の利益とは何かを探求し続けることにつながります。また、子どもが意見(意向や思い)を表明できる場合には、それらを受け止め、相応に尊重しなければなりません(意見表明権の保障、本条約12条)。子どもたちの中には、自分の思いをきちんと聴いてもらえた経験が少ない子、思いを踏みにじられ本心をいわなくなった子、現実の厳しさから考えることを諦めたようにみえる子もいます。そうした子どもたちと関係をつなげ、徐々に芽生えた思いや気持ちを受け止め、その思いを一緒にかたち(ことば)にしていくこと(意見形成支援)、その思いの表明を手伝うこと(意見表明支援)も、子どもの意見表明権の保障の内容をなすものです。こうした意見表明支援の取組みは、社会的養護を必要とする子どもについて制度化されましたが、それに留まらず全ての子どもに対し行われていくべきものと考えます。
また、子どもに対する権利侵害が具体的に認められる場合には、その権利回復のために子どもに寄り添って対応をしていく必要があり、そうしたオンブズパースン等の相談・権利救済機関の設置も必要です。この点こども大綱においても、「こどもの権利が侵害された場合の救済機関として、地方公共団体が設置するオンブズパーソン等の相談救済機関の実態把握や事例の周知」を行うこととされ、その取組を国が後押しすることとされています。全国では約50の地方公共団体に設置されていますが、広島県内には未だ設置された地方公共団体はありません。
3 当会は、これまでも、子どもの権利保障の進展を目指し、子ども電話相談、いじめ予防授業の実施、スクールロイヤーの派遣、子どもシェルターの運営支援、子どもの手続代理人や少年事件における付添人の活動、こどもの日記念イベントにおける子どもの権利の普及啓発等、種々の活動を続けてきました。
当会は、声明の趣旨で述べたとおり、今後も、本条約に基づく子どもの権利が保障され、子どもたちが心身ともに伸びやかに育ち、子どもたちが自らの人生を自らのものとして生きていける社会の実現に向けて、市民の皆さまとともに尽力してまいります。
以上