声明・決議・意見書

会長声明2005.04.23

検察庁における接見に関する会長声明

広島弁護士会
会長  山田延廣

最高裁判所第三小法廷は,平成17年4月19日,広島地方検察庁が当会の会員である定者吉人弁護士の同庁舎内での接見申立に対し,「接見室が無い」との理由のみで接見を拒否した国家賠償請事件につき,この接見拒否は違法であるが,この接見拒否を行った検察官の判断には過失はなかった旨の判決を下した。
本判決は,取り調べのために検察庁に押送された被疑者について,いわゆる接見室と呼ばれる接見施設がない場合でも他に接見に適した場所を探し,かつ,これがない場合でも弁護人との接見を実現するために弁護人の意向を確認するなど配慮し,調整を行う義務があるとして,本件検察官の接見拒否はこの義務を怠った違法があると判断したものである。
ところで,憲法34条は,「何人も……直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ,抑留又は拘禁されない。」と規定し,被疑者に弁護人の依頼権を保障している。
ところが,現在の検察庁における捜査実務では,捜査の便宜のために多くの被疑者を一度に検察庁に押送する「集中押送」と呼ばれる運用が取られているため,被疑者は,概ね一日中,検察庁内に滞在することを余儀なくされたうえ,弁護人が接見を要求しても前記接見室がないことを理由にこれが拒否され,結局は,この弁護人依頼権が保障されずに抑留又は拘禁されている実情にある。
今回の最高裁判決は,このような実務運用が違法であることを明らかにしたものである。
このため,当会は,この判決を契機に,広島地方検察庁が庁内での接見を認めないこれまでの運用を改めること,また,全国の検察庁においても,上記判決に従った運用がなされることを強く求めるものである。
なお,本判決は,検察官の行為が違法であることを認めながら,当時は接見室のない検察庁舎内での接見について裁判例や学説がないことや,接見を拒否することが検察官の職務行為の基準として確立されていたことなどを理由として担当検察官の過失を否定している。
しかし,このような判断は,検察官が違法な行為を行なった場合でも,従前の運用に従っていれば過失がないことを認めるもので,検察庁の違法な実務運用を追認し,その違法な行為を放置することとなるため,到底,容認することはできない。
当会は,今後,捜査機関が被疑者及び被告人に対し,接見拒否など行わないよう強く求めるとともに,裁判所に対してはこのような違法行為に対しては毅然とした判断をするよう求めるものである。

以上