会長声明2005.08.03
核廃絶への取組み等を求める会長声明
広島弁護士会
会長 山田延廣
当会は,今後とも核廃絶と平和の維持のために全力を尽くす決意であることを表明したうえ,日本政府に対し,①核兵器廃絶に向けて国際社会において主導的かつ積極的な活動を行うこと,②及び,被爆者に対して,適切な被爆者援護政策を実施することを求める。
理 由
1 被爆60周年を迎えて
1945年8月6日にヒロシマ,同年8月9日にナガサキに対して原子爆弾(以下,原爆という)が投下され,人類が初めて核兵器の惨禍を受けてから60年目を迎えようとしている。
この原爆の投下により,広島市と長崎市は,壊滅状態となり,一瞬のうちに多くの人々の命が奪われ(1945年末までに計21万人の被爆による死者が生じたとされている),その後わが国はようやく敗戦を決意するに至ったのである。つまり,わが国はこの原爆による多くの人々の惨禍の結果,平和を享受することができたと言っても過言ではない。
このような節目の時期を迎えるにあたり,私たち広島弁護士会は,改めて,今後とも継続して核廃絶と平和の維持のために全力を尽くすことを誓うとともに,政府に対し,核廃絶に向けて国際社会に対して主導的,積極的な活動を行うこと,及び,被爆者に対する適切な援護を求めるものである。
2 核兵器廃絶を巡る現在の情勢とわが国の態度について
ヒロシマ及びナガサキの原爆による悲惨な被害は,その後,世界の多くの人々に伝わり,国際司法裁判所(ICJ)は,1996年7月8日,核兵器の違法性に関する勧告的意見において,「国際管理の下において核軍縮交渉を誠実に遂行し,完結させる義務がある」と判断し,核拡散防止条約(NPT)の2000年NPT再検討会議において,全加盟国は,この勧告的意見主文を踏まえて,最終文書で「保有核兵器の完全廃棄の明確な約束」と「CTBT(包括的核実験停止条約)早期発効」を含む核軍縮措置をとることを誓約した。
ところが,その後,米国政府は,核先制攻撃も辞さないとし,超小型核兵器や地中貫通核爆弾など新型核兵器開発を進め,核実験の再開を企図するに至り,本年5月のNPT再検討会議では,CTBTを批准しない旨を明確にしている。また,イスラエル,インド,イラン,パキスタン,北朝鮮等の諸国も核兵器を保有し,または,保有することを公言しており,世界の核兵器廃絶の願いに逆行する状況が生じている。
このような中にあって,日本政府は,被爆国の政府として,米国を初めとする全ての核保有国に対して積極的に核廃絶を求めるべきであるのに,再検討会議などの場において核廃絶のための合意形成に積極的なイニシャチブを発揮していない。
3 日本政府の被爆者援護行政
また,原爆投下から生き残った被爆者は,火傷や急性放射能障害に苛まされながらも,今度は,いつ発病するとも知れない放射能障害に対する不安の中で生活してきた。
これに対して,日本政府は,最高裁判決が原爆医療法の法的性格は,国家補償的性格を持つものであることを明らかにしたことや,被爆者を中心とした運動の高まりにより,1994年(平成6年),「国の責任」を明記した被爆者援護法を制定するに至った。
しかし,現在においても,日本政府は,「在外被爆者」の健康管理手当の申請や被爆者健康手帳の交付申請につき,来日しない限り,被爆者の権利を認めない取扱いをして在外被爆者の保護に消極的である。
また,厚生労働省は,被爆者援護法の原爆症認定において,極めて厳格な姿勢をとり,認定被爆者は,被爆者健康手帳の交付を受けたものの1%にも満たない状態にある。
このように,日本政府の被爆者行政は,被爆者の権利を不当に制約し,極めて不十分と言わざるを得ないため,これまでの被爆援護政策を見直したうえ,適切な援護政策を行うことを求めるものである。
4 当会の立場と今後の活動について
当会は,人類最初の被爆地の法律家団体として,また,我々の先達を含む多くの市民がこのヒロシマにおける原爆により命を落としたという経緯から,全国に先駆けて会内に「核廃絶と平和」を求めるための委員会である被爆50周年平和シンポジュウム実行委員会(現在の平和推進委員会)を設立し,これまで,「核廃絶を求めるシンポジュウム」などを開催するなどして核廃絶と平和の維持・確立を積極的かつ継続して唱えてきた。
今後とも,私たち自身が,核兵器廃絶と平和な世界を目指して活動する旨決意するとともに,日本政府に対し,核廃絶のための積極的な活動と,被爆者への適切な援護の実施を強く求めるものである。
以上
広島弁護士会
会長 山田延廣
当会は,今後とも核廃絶と平和の維持のために全力を尽くす決意であることを表明したうえ,日本政府に対し,①核兵器廃絶に向けて国際社会において主導的かつ積極的な活動を行うこと,②及び,被爆者に対して,適切な被爆者援護政策を実施することを求める。
理 由
1 被爆60周年を迎えて
1945年8月6日にヒロシマ,同年8月9日にナガサキに対して原子爆弾(以下,原爆という)が投下され,人類が初めて核兵器の惨禍を受けてから60年目を迎えようとしている。
この原爆の投下により,広島市と長崎市は,壊滅状態となり,一瞬のうちに多くの人々の命が奪われ(1945年末までに計21万人の被爆による死者が生じたとされている),その後わが国はようやく敗戦を決意するに至ったのである。つまり,わが国はこの原爆による多くの人々の惨禍の結果,平和を享受することができたと言っても過言ではない。
このような節目の時期を迎えるにあたり,私たち広島弁護士会は,改めて,今後とも継続して核廃絶と平和の維持のために全力を尽くすことを誓うとともに,政府に対し,核廃絶に向けて国際社会に対して主導的,積極的な活動を行うこと,及び,被爆者に対する適切な援護を求めるものである。
2 核兵器廃絶を巡る現在の情勢とわが国の態度について
ヒロシマ及びナガサキの原爆による悲惨な被害は,その後,世界の多くの人々に伝わり,国際司法裁判所(ICJ)は,1996年7月8日,核兵器の違法性に関する勧告的意見において,「国際管理の下において核軍縮交渉を誠実に遂行し,完結させる義務がある」と判断し,核拡散防止条約(NPT)の2000年NPT再検討会議において,全加盟国は,この勧告的意見主文を踏まえて,最終文書で「保有核兵器の完全廃棄の明確な約束」と「CTBT(包括的核実験停止条約)早期発効」を含む核軍縮措置をとることを誓約した。
ところが,その後,米国政府は,核先制攻撃も辞さないとし,超小型核兵器や地中貫通核爆弾など新型核兵器開発を進め,核実験の再開を企図するに至り,本年5月のNPT再検討会議では,CTBTを批准しない旨を明確にしている。また,イスラエル,インド,イラン,パキスタン,北朝鮮等の諸国も核兵器を保有し,または,保有することを公言しており,世界の核兵器廃絶の願いに逆行する状況が生じている。
このような中にあって,日本政府は,被爆国の政府として,米国を初めとする全ての核保有国に対して積極的に核廃絶を求めるべきであるのに,再検討会議などの場において核廃絶のための合意形成に積極的なイニシャチブを発揮していない。
3 日本政府の被爆者援護行政
また,原爆投下から生き残った被爆者は,火傷や急性放射能障害に苛まされながらも,今度は,いつ発病するとも知れない放射能障害に対する不安の中で生活してきた。
これに対して,日本政府は,最高裁判決が原爆医療法の法的性格は,国家補償的性格を持つものであることを明らかにしたことや,被爆者を中心とした運動の高まりにより,1994年(平成6年),「国の責任」を明記した被爆者援護法を制定するに至った。
しかし,現在においても,日本政府は,「在外被爆者」の健康管理手当の申請や被爆者健康手帳の交付申請につき,来日しない限り,被爆者の権利を認めない取扱いをして在外被爆者の保護に消極的である。
また,厚生労働省は,被爆者援護法の原爆症認定において,極めて厳格な姿勢をとり,認定被爆者は,被爆者健康手帳の交付を受けたものの1%にも満たない状態にある。
このように,日本政府の被爆者行政は,被爆者の権利を不当に制約し,極めて不十分と言わざるを得ないため,これまでの被爆援護政策を見直したうえ,適切な援護政策を行うことを求めるものである。
4 当会の立場と今後の活動について
当会は,人類最初の被爆地の法律家団体として,また,我々の先達を含む多くの市民がこのヒロシマにおける原爆により命を落としたという経緯から,全国に先駆けて会内に「核廃絶と平和」を求めるための委員会である被爆50周年平和シンポジュウム実行委員会(現在の平和推進委員会)を設立し,これまで,「核廃絶を求めるシンポジュウム」などを開催するなどして核廃絶と平和の維持・確立を積極的かつ継続して唱えてきた。
今後とも,私たち自身が,核兵器廃絶と平和な世界を目指して活動する旨決意するとともに,日本政府に対し,核廃絶のための積極的な活動と,被爆者への適切な援護の実施を強く求めるものである。
以上