会長声明2005.10.26
刑務所国賠に対する会長声明
広島弁護士会
会長 山田延廣
1 本日、広島高等裁判所は、当会及び当会会員が提訴していた2件の国家賠償請求控訴事件について、いずれも請求を退けた1審判決を変更して、国に対し、当会に対する損害賠償を命じる判決(以下、本判決という)をした。これらの訴訟は、広島刑務所の被収容者から当会に対して救済申立がなされた、同刑務所内における人権侵害事件の調査活動に関するものである。当会の人権擁護委員会委員である当会会員は、申立人の主張にかかる事実を見聞したとされる受刑者との面会調査を申し入れたところ、同刑務所が「施設管理運営上の支障」を理由として面会を拒否し、調査ができなかったため、同刑務所長を監督する国に対し損害賠償請求した事案である。
2 当会を含めた各弁護士会及び日本弁護士連合会が行う人権救済活動は、弁護士法 1条に基づく人権擁護活動であり、その手続の厳格性、これまでの活動実績及び国民の信頼によって支えられてきたものである。当会は、毎年、これまで広島刑務所をはじめとする刑事拘禁施設の被収容者から、数多くの人権救済の申立を受け、これを誠実に調査したうえ、警告や勧告するなどして活動を積み重ねてきた。
本判決は、これら弁護士会の人権救済活動を適正に評価したうえ、面会を拒否した刑務所長の処分を違法であると判断したもので、高く評価できるものである。
3 2002年、名古屋刑務所での死傷事件をはじめとして、次々と刑務所や拘置所での違法かつ非人道的な処遇が行われていることが明らかとなった。このため、この反省をふまえて行刑改革会議が発足し、同会議は2003年12月、「行刑施設における被収容者の人権侵害に対し、公平かつ公正な救済を図るためには、矯正行政を所掌する法務省から不当な影響を受けることなく、独自に調査を実施した上で判断し、矯正行政をあずかる法務大臣に勧告を行うことのできる機関を設置することが必要不可欠である」と指摘した。
また、国際人権(自由権)規約委員会の最終見解(勧告)においても、我が国の刑務所での人権侵害に対する強い懸念と救済に関する制度の欠如が指摘され、国際的にも実効性のある制度の構築を求められているところでもある。
本判決は、このような指摘や弁護士会の人権調査救済活動の実態を直視し、1審判決を変更したうえ、国に対して損害賠償を認めたもので、その優れた人権感覚に敬意を表するものである。
4 刑務所長が面会を拒否する根拠とされていた監獄法は、本年、改正され、面会に関する規定も大幅に改められた。今後は、広島刑務所をはじめとする全国の刑事施設において、本判決の意義を適切に理解したうえ、新制度の運用がなされるよう強く期待する。
当会は、本判決をふまえ、今後も人権救済活動を継続して、刑事拘禁施設における処遇の改善に力を尽くすことを表明する。
以上
広島弁護士会
会長 山田延廣
1 本日、広島高等裁判所は、当会及び当会会員が提訴していた2件の国家賠償請求控訴事件について、いずれも請求を退けた1審判決を変更して、国に対し、当会に対する損害賠償を命じる判決(以下、本判決という)をした。これらの訴訟は、広島刑務所の被収容者から当会に対して救済申立がなされた、同刑務所内における人権侵害事件の調査活動に関するものである。当会の人権擁護委員会委員である当会会員は、申立人の主張にかかる事実を見聞したとされる受刑者との面会調査を申し入れたところ、同刑務所が「施設管理運営上の支障」を理由として面会を拒否し、調査ができなかったため、同刑務所長を監督する国に対し損害賠償請求した事案である。
2 当会を含めた各弁護士会及び日本弁護士連合会が行う人権救済活動は、弁護士法 1条に基づく人権擁護活動であり、その手続の厳格性、これまでの活動実績及び国民の信頼によって支えられてきたものである。当会は、毎年、これまで広島刑務所をはじめとする刑事拘禁施設の被収容者から、数多くの人権救済の申立を受け、これを誠実に調査したうえ、警告や勧告するなどして活動を積み重ねてきた。
本判決は、これら弁護士会の人権救済活動を適正に評価したうえ、面会を拒否した刑務所長の処分を違法であると判断したもので、高く評価できるものである。
3 2002年、名古屋刑務所での死傷事件をはじめとして、次々と刑務所や拘置所での違法かつ非人道的な処遇が行われていることが明らかとなった。このため、この反省をふまえて行刑改革会議が発足し、同会議は2003年12月、「行刑施設における被収容者の人権侵害に対し、公平かつ公正な救済を図るためには、矯正行政を所掌する法務省から不当な影響を受けることなく、独自に調査を実施した上で判断し、矯正行政をあずかる法務大臣に勧告を行うことのできる機関を設置することが必要不可欠である」と指摘した。
また、国際人権(自由権)規約委員会の最終見解(勧告)においても、我が国の刑務所での人権侵害に対する強い懸念と救済に関する制度の欠如が指摘され、国際的にも実効性のある制度の構築を求められているところでもある。
本判決は、このような指摘や弁護士会の人権調査救済活動の実態を直視し、1審判決を変更したうえ、国に対して損害賠償を認めたもので、その優れた人権感覚に敬意を表するものである。
4 刑務所長が面会を拒否する根拠とされていた監獄法は、本年、改正され、面会に関する規定も大幅に改められた。今後は、広島刑務所をはじめとする全国の刑事施設において、本判決の意義を適切に理解したうえ、新制度の運用がなされるよう強く期待する。
当会は、本判決をふまえ、今後も人権救済活動を継続して、刑事拘禁施設における処遇の改善に力を尽くすことを表明する。
以上