会長声明2010.04.20
2010年NPT再検討会議において日本国政府が核兵器廃絶に向け主導的役割を果たすことを求める会長声明
広島弁護士会
会長 大迫唯志
声明の趣旨
当会は、本年5月、核拡散防止条約(NPT)再検討会議が開催されるに当たり、日本国政府に対し、核兵器を禁止し、廃絶する条約を締結するため、主導的な役割を果たすことを求める。
声明の理由
1、はじめに
1945年8月、広島市及び長崎市において、原子爆弾により、一瞬のうちに多くの尊い市民の命が奪われた。被爆者の「原爆の悲劇は二度と繰り返してはならない」、「生きているうちに核兵器の廃絶を」との声は、自らが残虐な核兵器による被害を体験したことから発せられる悲痛な叫びである。
当会は、被爆地ヒロシマの弁護士会として、これまで核兵器の廃絶のためにシンポジュウム等を開催して、市民に対して核廃絶の必要性を訴えてきた。今回、このNPT再検討会議が開催されるにあたり、改めて日本国政府に対し、核兵器全廃のために上記趣旨の役割を果たすことを求めるものである。
2、国際司法裁判所による勧告的意見
国際司法裁判所(ICJ)は、1996年7月8日、「国家の存亡が危険にさらされている自衛の極端な状況において、核兵器の威嚇または使用が合法であるか、違法であるかについて、確定的に結論を下すことができない。」としながらも、「核兵器の威嚇または使用は、一般的に、武力紛争に適用される国際法、とりわけ人道法の原則及び規則に反する」としたうえで、核兵器保有国を含むNPT締結国に対し核軍縮のための交渉を誠実に遂行して「完結させる義務がある」旨の勧告的意見を表明した。
3、国際情勢とNPT再検討会議の重要性
上記ICJの勧告的意見を踏まえ、2000年NPT再検討会議では、最終文書において、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効、核実験の一時停止、保有核兵器を全廃することの明確な約束と核軍縮の措置などが採決され、核廃絶に向けて前進したかと思われていた。
ところが、その後の、米国の包括的核実験禁止条約批准の拒否など核軍縮に対する否定的態度や地下攻撃用の新型核や小型核の開発、イスラエル・インド及びパキスタンなどの事実上の核保有国やイラン・北朝鮮など核兵器の保有を目指す国の増大等の出来事は、世界の核兵器を巡る情勢を危機的な状況へと後退させた。
これに対し、2009年4月、米国オバマ大統領はプラハにおいて、米国が「核兵器のない世界」を追求する決意であることを宣言し、核兵器を使用した唯一の核保有国の責任として核兵器廃絶に向けて行動することを表明し、本年3月6日、NPT発効40周年を迎えるあたり、「核態勢を見直して」「核兵器の数を削減し、国家安全保障戦略における役割を縮小する」と述べ、NPT再検討会議を前に核廃絶に向ける決意を鮮明にした。
わが国も、鳩山首相が2009年9月の国連総会演説において「日本は核保有国と非核保有国の架け橋となって核軍縮の促進役になれる可能性がある」と発言し、2009年9月24日安保理首脳会合で全会一致で採択された「非核兵器地帯や核不拡散体制を強化する」旨の決議(1887号決議)につき、理事国として賛成している。
このように、本年のNPT再検討会議では、核廃絶へ向けての具体的な成果が期待されており、核兵器廃絶を求めるわが国、広島市及び長崎市にとって極めて重要な会議となるはずである。
4、まとめ
日本国政府は、被爆国として、また、前記安保理決議の賛成国として、核廃絶のために行動する責務がある。そして、上記鳩山首相の言葉にもあるように、国際社会の促進役として核廃絶の条約締結に向けて主導的な役割を果たすことを強く求められている。
そして、このような行動は、恒久平和主義を基本原理とし、「平和を維持する国際社会において名誉ある地位を占める」ことを宣言するわが国の憲法が求めるところである。
よって、当会は、日本国政府に対し、声明の趣旨の役割を果たすことを求める。
以上
広島弁護士会
会長 大迫唯志
声明の趣旨
当会は、本年5月、核拡散防止条約(NPT)再検討会議が開催されるに当たり、日本国政府に対し、核兵器を禁止し、廃絶する条約を締結するため、主導的な役割を果たすことを求める。
声明の理由
1、はじめに
1945年8月、広島市及び長崎市において、原子爆弾により、一瞬のうちに多くの尊い市民の命が奪われた。被爆者の「原爆の悲劇は二度と繰り返してはならない」、「生きているうちに核兵器の廃絶を」との声は、自らが残虐な核兵器による被害を体験したことから発せられる悲痛な叫びである。
当会は、被爆地ヒロシマの弁護士会として、これまで核兵器の廃絶のためにシンポジュウム等を開催して、市民に対して核廃絶の必要性を訴えてきた。今回、このNPT再検討会議が開催されるにあたり、改めて日本国政府に対し、核兵器全廃のために上記趣旨の役割を果たすことを求めるものである。
2、国際司法裁判所による勧告的意見
国際司法裁判所(ICJ)は、1996年7月8日、「国家の存亡が危険にさらされている自衛の極端な状況において、核兵器の威嚇または使用が合法であるか、違法であるかについて、確定的に結論を下すことができない。」としながらも、「核兵器の威嚇または使用は、一般的に、武力紛争に適用される国際法、とりわけ人道法の原則及び規則に反する」としたうえで、核兵器保有国を含むNPT締結国に対し核軍縮のための交渉を誠実に遂行して「完結させる義務がある」旨の勧告的意見を表明した。
3、国際情勢とNPT再検討会議の重要性
上記ICJの勧告的意見を踏まえ、2000年NPT再検討会議では、最終文書において、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効、核実験の一時停止、保有核兵器を全廃することの明確な約束と核軍縮の措置などが採決され、核廃絶に向けて前進したかと思われていた。
ところが、その後の、米国の包括的核実験禁止条約批准の拒否など核軍縮に対する否定的態度や地下攻撃用の新型核や小型核の開発、イスラエル・インド及びパキスタンなどの事実上の核保有国やイラン・北朝鮮など核兵器の保有を目指す国の増大等の出来事は、世界の核兵器を巡る情勢を危機的な状況へと後退させた。
これに対し、2009年4月、米国オバマ大統領はプラハにおいて、米国が「核兵器のない世界」を追求する決意であることを宣言し、核兵器を使用した唯一の核保有国の責任として核兵器廃絶に向けて行動することを表明し、本年3月6日、NPT発効40周年を迎えるあたり、「核態勢を見直して」「核兵器の数を削減し、国家安全保障戦略における役割を縮小する」と述べ、NPT再検討会議を前に核廃絶に向ける決意を鮮明にした。
わが国も、鳩山首相が2009年9月の国連総会演説において「日本は核保有国と非核保有国の架け橋となって核軍縮の促進役になれる可能性がある」と発言し、2009年9月24日安保理首脳会合で全会一致で採択された「非核兵器地帯や核不拡散体制を強化する」旨の決議(1887号決議)につき、理事国として賛成している。
このように、本年のNPT再検討会議では、核廃絶へ向けての具体的な成果が期待されており、核兵器廃絶を求めるわが国、広島市及び長崎市にとって極めて重要な会議となるはずである。
4、まとめ
日本国政府は、被爆国として、また、前記安保理決議の賛成国として、核廃絶のために行動する責務がある。そして、上記鳩山首相の言葉にもあるように、国際社会の促進役として核廃絶の条約締結に向けて主導的な役割を果たすことを強く求められている。
そして、このような行動は、恒久平和主義を基本原理とし、「平和を維持する国際社会において名誉ある地位を占める」ことを宣言するわが国の憲法が求めるところである。
よって、当会は、日本国政府に対し、声明の趣旨の役割を果たすことを求める。
以上