声明・決議・意見書

会長声明2012.03.30

死刑執行の再開に関する会長声明

広島弁護士会
会長 水中誠三

昨日、広島拘置所において1名、東京拘置所において1名及び福岡拘置所において1名、計3名の死刑確定者に対して死刑が執行された。今回の執行は、2010年7月28日以降、1年8か月ぶりの死刑執行の再開となるもので、極めて遺憾な事態であり、死刑執行の再開について強く抗議する。
我が国の死刑制度に対し、国際社会は注目している。近時、国連総会本会議において、死刑執行の停止を求める決議が圧倒的多数の賛成で採択されてきたほか、国連機関においても、日本政府に対して、死刑執行停止の勧告や死刑制度の廃止を前向きに検討するようにとの勧告がなされている。このように、世界では、死刑制度の廃止が潮流となっており、我が国をはじめとする死刑存置国に対し、死刑の執行を停止し、あるいは死刑適用の制限を求める動きがますます強まっている。
国連総会本会議での決議の採択や国連機関による度重なる勧告は、いずれも死刑が最も基本的な人権である生命に対する権利を否定する究極の刑罰であり、死刑制度は人権にかかわる重大な問題であるという認識のもとになされている。現行の死刑制度が抱える問題点を広く社会が共有し、改革の方向性を探るべきである。
日本弁護士連合会は、2012年2月15日の会長声明で、精神障がいが疑われる死刑確定者に対する死刑の執行による人権侵害の可能性を危惧し、法務大臣等に対し、精神障がいのある死刑確定者に対しては、まず何よりも適切な医療措置がとられるべきであることを指摘した。この点、今回、広島拘置所で執行された死刑確定者は、刑事裁判においても責任能力の有無が大きく争われた経緯もあり、精神障がいの疑いがある者であるところ、かかる者に対して執行がなされたことは問題である。
当会は、死刑をめぐる情報が的確に開示された上、死刑の存廃についての国民的な議論が尽くされるまで、一定期間、死刑の執行を停止するよう要請してきているところ、前記の国連総会決議が採択されてきたことを受け、日本政府が速やかに死刑の執行を一時停止し、制度の見直しを行う作業に着手すべきことを求めるものである。

以上