会長声明2013.11.26
特定秘密保護法案の衆議院特別委員会可決に抗議する会長声明
広島弁護士会
会長 小野裕伸
衆議院の国家安全保障に関する特別委員会は,11月26日,特定秘密保護法案を可決した。
当会はこれまで,国民の知る権利など基本的人権を侵害する特定秘密保護法案の危険性を重ねて指摘し,廃案を求めてきた。同様に法案の問題点を指摘する報道も相次ぎ,世論調査では法案に反対または慎重審議を求める意見が多数を占めた。それにもかかわらず,法案審議入りからわずか20日間で,法案の危険性が何ら解消されないまま衆議院特別委員会で可決されたことは極めて大きな問題である。
可決された法案は,国会提出時の法案から修正が行われたものの,法案の根幹には触れない部分的な修正にとどまり,これまで当会が指摘してきた懸念や問題点にはまったく応えていない。
特定秘密の指定期間については,最長60年と修正されたうえ,延長可能な例外項目が広範かつあいまいであるため,政府や行政の判断一つで,多くの特定秘密の非公開期間が延長可能となり,永久に情報が秘密化されるという危険性は消えていない。
特定秘密の指定権限者については,5年間の指定がない行政機関は指定の資格を失うこととされたが,行政機関の長が5年間で1つでも特定秘密を指定すれば権限を保持することが可能となるもので,指定権限者を限定する効果はないに等しく,行政機関が指定権限を保持するために,指定する必要のない情報を秘密に指定するおそれもある。
行政による恣意的な秘密指定が行われないよう,その妥当性をチェックする仕組みについても,秘密指定の一般的基準を内閣総理大臣が作成することや,独立機関の設置を検討することが盛り込まれたが,妥当性のチェックは第三者が行うことに意味があるのであって,行政の監視を行政のトップである内閣総理大臣が行っても実効性に乏しい。独立機関の設置についても「検討」するのみであって,将来,設置されるのかどうかの保証はなく,どのような機関となるのかも不明である。
適性評価制度によるプライバシー権侵害の危険性については,何らの手当もなされていない。
国家が扱う情報は,本来,健全な民主主義の根幹を支える国民共有の財産である。公正で民主的な行政を推進するためには,国民の的確な理解と批判が必要であり,国家が扱う情報は原則として国民に公表・公開されなければならない。しかしながら,可決された特定秘密保護法案は,広範かつあいまいな規定により,第三者のチェックもないままに行政機関に秘密化の権限を広く与え,一方で,秘密化された情報にアクセスしようとする国民,国会議員,報道関係者を重罰規定によって牽制するものである。政府が安全保障上の理由によって,一定の事項を一定の期間,秘密とする必要があると判断し対応していることを全面的に否定するものではないが,このような対応を許容することによって,国民の基本的人権である知る権利,言論の自由,プライバシー権が侵害されるべきではない。
法案概要が公表されてから数えても3か月弱であるが,国民的な理解や議論も不十分なまま,法案は,11月7日に衆議院で審議入りとなった。各界や国民から法案に対する反対の意見が多数公表されているなか,わずか20日間で委員会可決というのは,あまりに拙速である。
安全保障上,一定期間の秘匿が必要な情報の保護は,国民の権利が侵害されないよう十分に注意しながら,情報公開法,公文書管理法などの改正と合わせて,情報管理のあり方全体の問題として,法案の必要性を含めて慎重に議論がなされるべきであり,当会は,衆議院特別委員会が,拙速に,国民の権利を侵害する特定秘密保護法案を可決したことに強く抗議する。
以上
広島弁護士会
会長 小野裕伸
衆議院の国家安全保障に関する特別委員会は,11月26日,特定秘密保護法案を可決した。
当会はこれまで,国民の知る権利など基本的人権を侵害する特定秘密保護法案の危険性を重ねて指摘し,廃案を求めてきた。同様に法案の問題点を指摘する報道も相次ぎ,世論調査では法案に反対または慎重審議を求める意見が多数を占めた。それにもかかわらず,法案審議入りからわずか20日間で,法案の危険性が何ら解消されないまま衆議院特別委員会で可決されたことは極めて大きな問題である。
可決された法案は,国会提出時の法案から修正が行われたものの,法案の根幹には触れない部分的な修正にとどまり,これまで当会が指摘してきた懸念や問題点にはまったく応えていない。
特定秘密の指定期間については,最長60年と修正されたうえ,延長可能な例外項目が広範かつあいまいであるため,政府や行政の判断一つで,多くの特定秘密の非公開期間が延長可能となり,永久に情報が秘密化されるという危険性は消えていない。
特定秘密の指定権限者については,5年間の指定がない行政機関は指定の資格を失うこととされたが,行政機関の長が5年間で1つでも特定秘密を指定すれば権限を保持することが可能となるもので,指定権限者を限定する効果はないに等しく,行政機関が指定権限を保持するために,指定する必要のない情報を秘密に指定するおそれもある。
行政による恣意的な秘密指定が行われないよう,その妥当性をチェックする仕組みについても,秘密指定の一般的基準を内閣総理大臣が作成することや,独立機関の設置を検討することが盛り込まれたが,妥当性のチェックは第三者が行うことに意味があるのであって,行政の監視を行政のトップである内閣総理大臣が行っても実効性に乏しい。独立機関の設置についても「検討」するのみであって,将来,設置されるのかどうかの保証はなく,どのような機関となるのかも不明である。
適性評価制度によるプライバシー権侵害の危険性については,何らの手当もなされていない。
国家が扱う情報は,本来,健全な民主主義の根幹を支える国民共有の財産である。公正で民主的な行政を推進するためには,国民の的確な理解と批判が必要であり,国家が扱う情報は原則として国民に公表・公開されなければならない。しかしながら,可決された特定秘密保護法案は,広範かつあいまいな規定により,第三者のチェックもないままに行政機関に秘密化の権限を広く与え,一方で,秘密化された情報にアクセスしようとする国民,国会議員,報道関係者を重罰規定によって牽制するものである。政府が安全保障上の理由によって,一定の事項を一定の期間,秘密とする必要があると判断し対応していることを全面的に否定するものではないが,このような対応を許容することによって,国民の基本的人権である知る権利,言論の自由,プライバシー権が侵害されるべきではない。
法案概要が公表されてから数えても3か月弱であるが,国民的な理解や議論も不十分なまま,法案は,11月7日に衆議院で審議入りとなった。各界や国民から法案に対する反対の意見が多数公表されているなか,わずか20日間で委員会可決というのは,あまりに拙速である。
安全保障上,一定期間の秘匿が必要な情報の保護は,国民の権利が侵害されないよう十分に注意しながら,情報公開法,公文書管理法などの改正と合わせて,情報管理のあり方全体の問題として,法案の必要性を含めて慎重に議論がなされるべきであり,当会は,衆議院特別委員会が,拙速に,国民の権利を侵害する特定秘密保護法案を可決したことに強く抗議する。
以上