声明・決議・意見書

会長声明2014.07.02

憲法第9条の政府解釈変更による集団的自衛権行使容認に反対する会長声明

広島弁護士会
会長 舩木孝和

1 当会は,2014(平成26)年5月2日,「憲法第9条の政府解釈変更による集団的自衛権行使容認に反対する会長声明」を公表し,同年5月27日,当会定期総会において「憲法第9条の政府解釈変更による集団的自衛権行使に反対する決議」を採択し,政府が,憲法第9条の政府解釈を変更し,集団的自衛権行使を容認しようとしていることに強く反対を表明してきた。
2 ところが,政府は,2014年(平成26年)7月1日,憲法9条の政府解釈を変更し,集団的自衛権行使を容認する閣議決定をした。
その内容は,「わが国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず,わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これによりわが国の存立が脅かされ,国民の生命,自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に,これを排除し,わが国の存立を全うし,国民を守るために他に適当な手段がないときに,必要最小限度の実力を行使することは,従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として憲法上許容される」などとするものである。
3 しかしながら,上記のような基準は極めて不明確であり,基準へのあてはめがその時々の政府の判断に任されることになれば,政府による恣意的な集団的自衛権の発動場面は拡大することになる。
さらに,一旦集団的自衛権を行使すれば,日本が相手国からの攻撃対象となり,元々想定していた事例をはるかに超えて日本が戦争に参加する可能性が高くなる。
よって,集団的自衛権を限定的に行使するなどということは困難である。
4 そもそも,憲法は,最高法規(第98条)として国家権力を制限することによって,国民の権利・自由を守ることを目的としている。憲法が前文及び第9条によって恒久平和主義を定め,戦争及び武力の行使を放棄し,戦力を保持しないとしているのは,国民の個人の尊重の原理(13条)と平和的生存を保障するためである。
にもかかわらず,長年にわたり形成されてきた憲法第9条の政府解釈を一内閣に過ぎない現行内閣が変更することは,立憲主義ひいては国民主権の基本原則に反する。
政府は,憲法改正手続をとることなく,与党間の協議を短期間で進め,閣議決定によって憲法第9条の政府解釈を変更したのであり,その手法は到底許されることではない。
5 当会は,政府が,閣議決定により憲法9条の政府解釈を変更し,集団的自衛権行使を容認したことに対し,強く反対し,抗議する。

以上