声明・決議・意見書

会長声明2014.08.29

死刑執行に関する会長声明

広島弁護士会
会長 舩木孝和

1、本日、東京拘置所及び仙台拘置支所において、各1名に対して死刑が執行された。特に、仙台拘置支所において執行された被執行者は、今月、第3次再審請求が棄却され、近日中に第4次再審請求を行うべく準備を進めていたと聞く。極めて遺憾な事態であり、死刑執行について強く抗議する。
2、死刑の廃止は国際的な趨勢であり、2012年(平成24年)12月20日には、国連総会において、全ての死刑存続国に対し、死刑廃止を視野に執行を停止するよう求める決議が、過去最多の111か国の賛成による賛成多数で採択された。こうした状況において、死刑制度を存置し、かつ死刑の執行を繰り返す日本の姿勢は際立っており、日本政府は、国連関係機関からも繰り返し、死刑の執行を停止し、死刑制度の廃止に向けた措置をとるよう勧告を受けてきている。
3、また、死刑制度の大きな問題点の1つに死刑が一度執行されてしまうと権利回復は最早不可能であり、取り返しの付かない結果となることがある。
1980年代に4名の死刑確定者に対する再審無罪判決がなされたことに見られるように誤判の可能性は否定できない。また、裁判当時においては判明し得なかった証拠上の問題点が科学技術の進歩により明らかになるという事情もある。
実際、本年3月27日、静岡地方裁判所は、「袴田事件」につき、犯行時の着衣とされていた衣類に付着した血痕のDNA型が袴田氏のDNA型と「一致しない」との弁護側提出の鑑定書などの証拠を新規性あるものと認め、死刑確定者に対する再審を開始する旨決定が下されている。
4、日本弁護士連合会は、2002年(平成14年)11月に「死刑問題に関する提言」を発表し、死刑執行を停止して、死刑制度の存廃についての国民的議論を尽くし、制度の改善を行うことを求め、その間は、死刑確定受刑者に対する死刑執行を停止することを求める立場を明らかにしてきている。
また、再三に亘り法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し、死刑制度に関する当面の検討課題について国民的議論を行うための有識者会議を設置し、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、死刑制度に関する世界の情勢について調査のうえ、調査結果と議論に基づき、今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと、そのような議論が尽くされるまでの間、すべての死刑の執行を停止すること等を求めていた。この要請を無視してなされた死刑執行は、当会としても到底容認することができない。
いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で死刑制度を存置している国は、日本・韓国・米国の3か国のみであるが、死刑を国家として統一して執行しているのは日本のみである。このような状況を受け、国際人権(自由権)規約委員会は、本年7月24日、日本政府に対し、死刑の廃止について十分に考慮することや、執行の事前告知、死刑確定者への処遇等をはじめとする制度の改善等を勧告している。
5、当会は、今回の死刑執行に強く抗議するとともに、日本政府が速やかに死刑の執行を一時停止し、死刑制度の廃止について全社会的議論を直ちに開始することを求めるものである。

以上