声明・決議・意見書

会長声明2015.07.16

衆議院が安全保障法制に関する法案を可決したことに抗議する会長声明

広島弁護士会
会長 木村 豊

第1 趣旨
衆議院が安全保障法制に関する法案を可決したことに強く抗議するとともに,本法案を廃案にすることを求める。

第2 理由
1 本日,衆議院本会議において,安全保障法制に関する法案(自衛隊法,武力攻撃事態対処法,周辺事態法,国際平和維持活動協力法等10の法律を改正する法案及び国際平和支援法案。以下「本法案」という)が,野党欠席のもと,与党である自民党,公明党の賛成多数で可決された。報道機関の世論調査において,国民への説明が不足しているとの声が高まっているにもかかわらず,与党は,形式的な審議時間の累積を根拠に審議が尽くされたと強弁し,採決を強行した。
2 当会は,本年5月26日,総会において,集団的自衛権の行使を容認し,また,政府の恣意的な判断によって海外での武力行使を認めることになる本法案は,憲法第9条に違反するほか,憲法改正手続きを経ることなく憲法を実質的に変えようとするものであり,立憲主義,国民主権の基本原則に反するものであるから許されないとして,「集団的自衛権の行使等を含む安全保障法制に関する法案に反対する決議」を採択した。
当会が同決議で指摘したように,本法案は,憲法上,重大な問題を有している。それにも関わらず,憲法改正の手続を経ることなく,一内閣の憲法解釈の変更に基づき法律の制定・改正を行うことは,憲法尊重擁護義務を課されている国務大臣や国会議員(憲法第99条)によってなしうることではない。
3 本法案に対しては,国会の内外から無数の批判があがっている。とりわけ,本年6月4日,衆議院憲法審査会において,参考人として招致された憲法学者3名(与党推薦の参考人も含む)が揃って本法案を「違憲」と断じたのは,本法案が憲法上,いかに問題を有するかを象徴的に表したものである。それにもかかわらず,これらの意見に耳を傾けようとせず,強行採決をした与党の態度は,まさに,憲法尊重擁護義務に反するものである。
4 今後,本法案については参議院での審議に移るが,仮に参議院で60日以内に法案が可決されなくとも,衆議院で3分の2以上の多数で再可決して法案を成立させる,いわゆる60日ルール(憲法第59条4項)が適用される可能性が残されている。衆議院での数を頼りに再可決を再び強行するようなことは,断じて許されない。
5 以上のとおりであるから,当会は,本法案を衆議院が可決したことに強く抗議するとともに,憲法に違反する本法案を廃案にすることを求める。

以上