会長声明2016.12.21
国際連合における核兵器禁止条約制定に向けた動きを歓迎し、日本国政府が主導的役割を果たすことを求める会長声明
広島弁護士会
会長 爲末 和政
声明の趣旨
当会は、本年10月27日、国連総会第一委員会が核兵器禁止条約制定に向けた議論を2017年3月から始めることを決議したことを歓迎し、日本国政府が核兵器禁止条約制定に向けた議論に参加し、核兵器を禁止し、廃絶する条約を締結するために主導的な役割を果たすことを求める。
声明の理由
1 本年10月27日、オーストリアなど57カ国が国連に提出した2017年3月から核兵器禁止条約制定交渉を開始する決議案は、国連総会第一委員会で賛成123カ国、反対38カ国、棄権16カ国と、70%の賛成で採択された。
これは、核拡散防止条約(NPT)第6条で、「国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行うことを約束」したことの具体化であり、核兵器禁止条約制定交渉の開始が国際社会で合意されたことは、歴史的な意義を有するものとして歓迎する。
2 1996年7月8日に国際司法裁判所が勧告的意見を出したように「核兵器の威嚇または使用は、一般的に、武力紛争に適用される国際法、とりわけ人道法の原則および規則に反する」ものである。また、2010年以降、赤十字国際委員会(ICRC)が、核兵器のもたらす壊滅的な人道的結果の問題を議論することを呼びかけ、同年のNPT再検討会議では、「核兵器のいかなる使用も壊滅的な人道的結果をもたらすことに深い懸念」を表明した。このように、広島市及び長崎市で原子爆弾の炸裂により、一瞬のうちに多くの尊い市民の命が奪われ、その後も多くの人々が原爆症などに苦しめられてきたことが、核兵器の非人道性として焦点化され、そのことが核兵器禁止条約制定に向けた動きの原動力となってきた。
3 2013年10月、日本国政府も、国連総会第一委員会で、「核兵器の人道的結果に関する共同声明」に賛同し、「私たちは、ICRCや国際人道機関とともに、核兵器のもたらす壊滅的な人道的結果の問題を議論しようという国際社会の新たな決意を歓迎します。政府がその責務を果たします。」とした。
4 さらに、日本は初めて核兵器により多大な非人道的結果を受けた国であり、非核三原則を堅持している立場からは、国際社会における核廃絶に向けた動きの中で、主導的役割を果たすべきである。
ところが、今回の国連第一委員会での議決では、米国が同盟国に決議案への反対を迫り、米国の核の傘の下にいる日本国政府は国連での核兵器禁止条約の交渉開始の決議に反対した。本来なら、共同提案国になるべき立場にありながら、反対投票を行ったことについては、国際社会の核廃絶に向けた動きに水を差すものとして、極めて遺憾であり、強く抗議する。
5 報道によれば、日本国政府は、国連での交渉開始の決議には反対したものの、2017年3月以降開かれる核兵器禁止条約の交渉には参加すると伝えられている。日本国政府が核保有国と非核国の橋渡しとして、交渉に参加する意向を表明したことは望ましいことである。当会は、日本国政府に対し、声明の趣旨の役割を果たすことを求め、以って核兵器禁止条約の締結交渉が円滑に進むよう期待する。
6 当会は、被爆地ヒロシマにある弁護士会として、平和、核兵器廃絶の問題に長年取り組んできた。今後も、核兵器の壊滅的な非人道的結果についての意識を社会に広め、広島の核廃絶、人類不戦の思いが実現される日が1日も早く到来するよう、引き続き真摯に取り組む所存である。
以上
広島弁護士会
会長 爲末 和政
声明の趣旨
当会は、本年10月27日、国連総会第一委員会が核兵器禁止条約制定に向けた議論を2017年3月から始めることを決議したことを歓迎し、日本国政府が核兵器禁止条約制定に向けた議論に参加し、核兵器を禁止し、廃絶する条約を締結するために主導的な役割を果たすことを求める。
声明の理由
1 本年10月27日、オーストリアなど57カ国が国連に提出した2017年3月から核兵器禁止条約制定交渉を開始する決議案は、国連総会第一委員会で賛成123カ国、反対38カ国、棄権16カ国と、70%の賛成で採択された。
これは、核拡散防止条約(NPT)第6条で、「国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約について、誠実に交渉を行うことを約束」したことの具体化であり、核兵器禁止条約制定交渉の開始が国際社会で合意されたことは、歴史的な意義を有するものとして歓迎する。
2 1996年7月8日に国際司法裁判所が勧告的意見を出したように「核兵器の威嚇または使用は、一般的に、武力紛争に適用される国際法、とりわけ人道法の原則および規則に反する」ものである。また、2010年以降、赤十字国際委員会(ICRC)が、核兵器のもたらす壊滅的な人道的結果の問題を議論することを呼びかけ、同年のNPT再検討会議では、「核兵器のいかなる使用も壊滅的な人道的結果をもたらすことに深い懸念」を表明した。このように、広島市及び長崎市で原子爆弾の炸裂により、一瞬のうちに多くの尊い市民の命が奪われ、その後も多くの人々が原爆症などに苦しめられてきたことが、核兵器の非人道性として焦点化され、そのことが核兵器禁止条約制定に向けた動きの原動力となってきた。
3 2013年10月、日本国政府も、国連総会第一委員会で、「核兵器の人道的結果に関する共同声明」に賛同し、「私たちは、ICRCや国際人道機関とともに、核兵器のもたらす壊滅的な人道的結果の問題を議論しようという国際社会の新たな決意を歓迎します。政府がその責務を果たします。」とした。
4 さらに、日本は初めて核兵器により多大な非人道的結果を受けた国であり、非核三原則を堅持している立場からは、国際社会における核廃絶に向けた動きの中で、主導的役割を果たすべきである。
ところが、今回の国連第一委員会での議決では、米国が同盟国に決議案への反対を迫り、米国の核の傘の下にいる日本国政府は国連での核兵器禁止条約の交渉開始の決議に反対した。本来なら、共同提案国になるべき立場にありながら、反対投票を行ったことについては、国際社会の核廃絶に向けた動きに水を差すものとして、極めて遺憾であり、強く抗議する。
5 報道によれば、日本国政府は、国連での交渉開始の決議には反対したものの、2017年3月以降開かれる核兵器禁止条約の交渉には参加すると伝えられている。日本国政府が核保有国と非核国の橋渡しとして、交渉に参加する意向を表明したことは望ましいことである。当会は、日本国政府に対し、声明の趣旨の役割を果たすことを求め、以って核兵器禁止条約の締結交渉が円滑に進むよう期待する。
6 当会は、被爆地ヒロシマにある弁護士会として、平和、核兵器廃絶の問題に長年取り組んできた。今後も、核兵器の壊滅的な非人道的結果についての意識を社会に広め、広島の核廃絶、人類不戦の思いが実現される日が1日も早く到来するよう、引き続き真摯に取り組む所存である。
以上