会長声明2018.07.11
最低賃金の大幅な引き上げを求める会長声明
広島弁護士会
会長 前川秀雅
第1 声明の趣旨
中央最低賃金審議会に対し,平成30年度地方最低賃金額改定の目安についての答申において,目安を大幅に引き上げることによって地域別最低賃金の大幅な引き上げを促すことを,また,広島地方最低賃金審議会に対し,主体的に最低賃金額の大幅な引き上げを図ることを求める。
第2 声明の理由
1 中央最低賃金審議会は,近々,厚生労働大臣に対し,地方最低賃金額改定の目安についての答申を行う予定である。その後,この目安答申を受けて各地方最低賃金審議会においても調査・審議を経て,賃金額改定の答申がされ,これを踏まえ各都道府県労働局長が地域別最低賃金を決定することとなる。
近年,非正規労働者の数が全労働者の4割弱にまで増加し,世帯における主たる稼得者が非正規労働者であるという世帯も多数現れ,いわゆる「ワーキングプア」と呼ばれる貧困層が拡大している。このような現状を踏まえれば,最低賃金制度を「すべての労働者を不当に低い賃金から保護する安全網(セーフティネット)」として真に実効的に機能させることが必要不可欠であり,最低賃金で働いたとしても人間らしい生活を持続的に営むことができるよう,最低賃金額を引き上げることが喫緊の課題というべきである。
2 現在の地域別最低賃金の全国加重平均額は,1時間あたり848円である。しかし,この金額では,1日8時間,週40時間働いたとしても月収約14万6000円,年収で約176万円にしかならず,労働者が賃金だけで人間らしい生活を持続的に営むには不十分な金額であるというほかない。そして,広島県の地域別最低賃金は,2017(平成29)年10月1日発効の額で1時間あたり818円にとどまっている。
最低賃金法は,第1条において,「賃金の低廉な労働者について,賃金の最低額を保障すること」によって「労働者の生活の安定,労働力の質的向上」に資することを目的とする旨を明示している。しかしながら,上記のとおり,現時点の最低賃金額は,当該目的にかなう状況にあるとは言いがたい。
3 最低賃金に関し,政府は,「新成長戦略」(2010(平成22)年6月18日閣議決定)において,2020年までに最低賃金時間額の全国加重平均を1000円にするという目標を掲げた。そして,「ニッポン一億総活躍プラン」(2016(平成28)年6月2日閣議決定)においても,年率3%程度を目途として全国加重平均が1000円となることを目指すとした。しかし,仮に年率3%で最低賃金の引き上げを行ったとしても,全国加重平均が1000円に達するのは2020年代の半ばとなってしまうことから,政府の目標を達成するだけでも,大幅な引き上げは急務である。
4 よって,当会は,労働者の生活の安定,労働力の質的向上及び国民経済の健全な発展への寄与という最低賃金法の目的を達するため,改めて,中央最低賃金審議会に対し,今回の答申において目安を大幅に引き上げることを求めるとともに,広島地方最低賃金審議会に対し,主体的に地域別最低賃金額の大幅な引き上げを図ることを求める。
以上
広島弁護士会
会長 前川秀雅
第1 声明の趣旨
中央最低賃金審議会に対し,平成30年度地方最低賃金額改定の目安についての答申において,目安を大幅に引き上げることによって地域別最低賃金の大幅な引き上げを促すことを,また,広島地方最低賃金審議会に対し,主体的に最低賃金額の大幅な引き上げを図ることを求める。
第2 声明の理由
1 中央最低賃金審議会は,近々,厚生労働大臣に対し,地方最低賃金額改定の目安についての答申を行う予定である。その後,この目安答申を受けて各地方最低賃金審議会においても調査・審議を経て,賃金額改定の答申がされ,これを踏まえ各都道府県労働局長が地域別最低賃金を決定することとなる。
近年,非正規労働者の数が全労働者の4割弱にまで増加し,世帯における主たる稼得者が非正規労働者であるという世帯も多数現れ,いわゆる「ワーキングプア」と呼ばれる貧困層が拡大している。このような現状を踏まえれば,最低賃金制度を「すべての労働者を不当に低い賃金から保護する安全網(セーフティネット)」として真に実効的に機能させることが必要不可欠であり,最低賃金で働いたとしても人間らしい生活を持続的に営むことができるよう,最低賃金額を引き上げることが喫緊の課題というべきである。
2 現在の地域別最低賃金の全国加重平均額は,1時間あたり848円である。しかし,この金額では,1日8時間,週40時間働いたとしても月収約14万6000円,年収で約176万円にしかならず,労働者が賃金だけで人間らしい生活を持続的に営むには不十分な金額であるというほかない。そして,広島県の地域別最低賃金は,2017(平成29)年10月1日発効の額で1時間あたり818円にとどまっている。
最低賃金法は,第1条において,「賃金の低廉な労働者について,賃金の最低額を保障すること」によって「労働者の生活の安定,労働力の質的向上」に資することを目的とする旨を明示している。しかしながら,上記のとおり,現時点の最低賃金額は,当該目的にかなう状況にあるとは言いがたい。
3 最低賃金に関し,政府は,「新成長戦略」(2010(平成22)年6月18日閣議決定)において,2020年までに最低賃金時間額の全国加重平均を1000円にするという目標を掲げた。そして,「ニッポン一億総活躍プラン」(2016(平成28)年6月2日閣議決定)においても,年率3%程度を目途として全国加重平均が1000円となることを目指すとした。しかし,仮に年率3%で最低賃金の引き上げを行ったとしても,全国加重平均が1000円に達するのは2020年代の半ばとなってしまうことから,政府の目標を達成するだけでも,大幅な引き上げは急務である。
4 よって,当会は,労働者の生活の安定,労働力の質的向上及び国民経済の健全な発展への寄与という最低賃金法の目的を達するため,改めて,中央最低賃金審議会に対し,今回の答申において目安を大幅に引き上げることを求めるとともに,広島地方最低賃金審議会に対し,主体的に地域別最低賃金額の大幅な引き上げを図ることを求める。
以上