声明・決議・意見書

意見書2013.05.08

「法曹養成制度検討会議・中間的とりまとめ」についての意見書 (前半)

法務省大臣官房司法法制部
司法法制課 御中

広島県広島市中区上八丁堀2番66号
広島弁護士会  
会長 小野裕伸

「法曹養成制度検討会議・中間的取りまとめ」について,当会は,下記のとおり意見を申し述べます。

<意見1>

① 項番
第3の1(1) プロセスとしての法曹養成

② 意見の内容
冒頭枠内の末尾に,「○上記法科大学院の定員削減や統廃合を検討するにあたっては,法科大学院の地域適正配置に十分配慮する必要がある。」との項目を挿入し,加えて,「(検討結果)」の欄の末尾に,「・法科大学院の定員削減や統廃合は,画一的な基準を適用した場合,地方の法科大学院の存続に影響が出ることが考えられる。法科大学院を中核とした法曹養成制度を前提とした場合,法曹志願者の側からすれば,従来の制度では不要であった学費等の経済的負担を強いられることになったのであるから,可能な限りその負担が軽減されるよう配慮する必要がある。地方に在住する法曹志願者への配慮の観点から,法科大学院の地域適正配置には十分配慮したうえ,画一的な基準のために地方の法科大学院が統廃合の対象になることがないよう,実情に応じた対応がなされるべきである。」との項目を挿入すべきである。

③ 意見の理由
当会は,当会と同様に地方の法科大学院を擁する地域の10の弁護士会と共同した会長声明(2013年(平成25年)1月28日)において,国に対し,法科大学院の地域適正配置の理念を最大限に尊重すること,地方の法科大学院について国立大学法人運営費交付金又は私立大学等経常費補助金を減額しないこと,及び地方の法科大学院に対して適正な公的支援を行うことを求めた。
しかし,本項においては,法科大学院を中核とする法曹養成制度の理念の維持と,その現状改善策としての法科大学院の定員削減及び統廃合に言及するものの,地域適正配置に関する配慮は一言も触れられていない。
新たな社会を見据え,それに対応するための法曹養成制度として「プロセス」を重視し,法科大学院を中核として専門的教育を行うことの意義は重要ではあるが,一方では,法曹志願者にとっては従来不要であった学費や下宿代等の経済的負担を増加させたことも事実である。
志願者に対して過剰な定員となっている法科大学院の定員削減及び統廃合は,法科大学院制度全体の改善という点では意味のあるものと思われるが,仮に全国一律の基準によって統廃合等が検討された場合,そもそも志願者の絶対数が少ない地方において,定員充足率等の基準をもとに,当該地方の法科大学院が統廃合等の対象とされるおそれがある。
地方の法科大学院は,同一県内に1校しかないところも多く,その法科大学院が廃校となると,その地方に住む法曹志願者は,否応なしに他県の法科大学院に通わざるを得ず,下宿代や通学費等の経済的負担が追加的に必要となり,それがゆえに法曹への途を断念せざるをえなくなるおそれもある。
また,地域に法科大学院が存在することの意義は,法曹養成のみにとどまらず,地域司法の充実・発展,地方分権を支える人材育成など,その地方における法化社会実現のための重要なインフラとなりうるものである。
広島県においては,広島大学及び広島修道大学の2校が法科大学院を設置しているが,2007年(平成19年)から2012年(平成24年)までのデータをみても,両校を修了して弁護士登録をした者のうち,67%にあたる60人が当会に登録(中国地方でみると81%にあたる72人が中国地方弁護士会連合会内の弁護士会に登録)して活躍し,人的な側面からも地域司法の充実に寄与している。
以上の点からみても,地方の法科大学院については,代替性のある都心部の法科大学院の統廃合とは異なる別段の配慮が必要であることは明白である。
よって,上記「②意見の内容」のとおりの修文を行い,全国適正配置の問題が今後の法曹養成についての検討に際して十分に配慮されるよう位置付けを行うべきである。

<意見2>

① 項番
第3の2(1) 教育の質の向上,定員・設置数・認証評価

② 意見の内容
冒頭枠内の末尾に,「○法科大学院の地域適正配置や夜間開講等の特性を有する法科大学院に対する配慮についても検討する必要がある」との項目を挿入し,加えて,「(検討結果)」の欄の末尾に,「・以上のような法科大学院に対する公的支援の見直しや法的措置の検討にあたっては,法曹志願者の多様性確保の観点から,重要な役割を担っている地方の法科大学院及び夜間法科大学院に対しては,基準の緩和や追加支援を行う等の配慮を行うことについても,本検討会議において検討する必要がある。」との項を挿入するべきである。

③ 意見の理由
本項においては,現状の法科大学院が抱える問題に対し,その現状改善策として公的支援の見直しや法的措置を検討するといった法科大学院制度自体の規模縮小のみに目が向けられており,法曹志願者の多様性確保についての積極的な方策,特に地方の法科大学院や夜間開講等の特性を有する法科大学院(以下単に「夜間法科大学院」という。)の存続や発展に関する検討については「配慮についても検討が必要」と抽象論な言辞にとどまり,具体的な内容に踏み込んでいない。
充実した法曹養成制度を再構築するという観点からすれば,司法試験の合格率が低いからといって,その弥縫策として分母である受験者の絞り込み(法科大学院の定員総数削減)を行ったとしても,帳尻合わせに過ぎず,早晩新たな問題に直面することになり,抜本的な解決にはなりえない。
中間的取りまとめにおいても言及されている「法曹志願者減少」に歯止めをかけるという観点からすれば,むしろ志願者の間口を広げて多様な法曹を養成する,すなわち全国津々浦々から,あらゆる階層の人材がチャレンジできるようにするべきであり,それを支える地方の法科大学院及び夜間法科大学院については,公的支援を財政面,人的支援の両面から拡充し,法的措置の策定にあたっても別の基準を設けるなど,特段の配慮をすることこそが必要である。
よって,上記「②意見の内容」のとおりの修文を行い,多様性確保の観点については,法曹養成制度検討会議内において具体的な提言を行うよう求めるものである。

以上