意見書2015.07.15
性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの 設置に関する意見書
広島県知事 湯﨑英彦 殿
広島弁護士会
会長 木村 豊
第1 意見の趣旨
1.広島県に対し,性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(性犯罪や性暴力被害に関し,関係諸機関が連携し,早期の適切な証拠保全と適切な被害者支援を一カ所で行うことができるセンター。以下,「センター」という。)を速やかに設置するよう求める。
2.広島県は,上記センターを病院内に拠点を有する「病院拠点型」とすべきである。
3.広島県に対し,センターの設置・運営に主体的に携わり,財政的支援を行うことを求める。
第2 意見の理由
1.センター設置の必要性
2014年(平成26年)に実施された男女間における暴力に関する調査(内閣府男女共同参画局実施)によれば,異性に無理矢理性交渉をされた人のうち,「警察に連絡・相談した」人は4.3%にとどまり,「どこ(だれ)にも相談しなかった」人は67.5%にも及び,多くの性犯罪・性暴力の被害者が,誰にも相談できず一人で問題を抱え込む実態が浮かび上がる。また,同調査によると,相談しなかった理由として相談機関に関連するものには,「恥ずかしくてだれにも言えなかった」(38%),「相談してもむだだと思った」(20.3%),「どこ(だれ)に相談してよいのかわからなかった」(5.1%)などが挙げられる。
こうした実態から国は第2次犯罪被害者等基本計画(平成23年3月閣議決定)において,被害者が安心して心身のケアを受けられるようセンターの設置を促進するための施策を盛り込み,全国18の都道府県においてセンターを設置している。中国地方においても岡山県,島根県及び鳥取県で既にセンターが設置済である。
広島県においても,被害者が安心して心身のケアを受けられるセンターを設置し,その存在を広く周知することで,一人でも多くの被害者が必要な支援を受けられる体制を速やかに調えることが求められる。
2.求められるセンターのあり方
性犯罪や性暴力の被害の中には,妊娠等に対する緊急対応が必要な事案等,その処置について一刻を争う場合があり(アフターピルの効用は72時間以内の投与で98%は避妊可能),かつ,医療機関による診察の結果を司法の場における証拠とするために組織や体液等を保存することが求められる事案もありうる。また,被害者が身体的精神的に不安を感じ,あるいは症状が出た場合には,いつでも専門家のアドバイス・治療を受けることができる場であることが必要である。そのためには,センターにおいて,速やかに専門医の診察が受けられる条件を整えることは必要であり,重要なことである。
センターを病院拠点型とすれば,被害者は被害直後の緊急対応等必要不可欠な医療を迅速に受けられるとともに,初期段階から精神面に対する長期的ケアを視野に入れた支援を受けることが可能となる。また,病院拠点型であれば相談をした場合に身体的ケアが受けられることは明確であり,被害者の安心に繋がる。
さらに,センターを利用するのは「性被害を受けた者」であるとの目が向けられやすく,ただでさえ相談を躊躇している被害者にとってハードルが高いところ,誰もが訪れやすい「病院」という施設にセンターを設置することで,被害者のセンター利用を促進することができる。さらに,相談員は被害者が繰り返し同じ事を話す負担をできるだけ軽減できるよう,知り得た情報を医師・看護師等に伝える必要があるが,情報量や伝達のスピード,正確性についても,同一病院内であれば,相談員と医療側がタッグを組んで支援をすることが可能となる。
以上より,被害者が安心して心身のケアその他の十分な支援を受けられるセンターのあり様としては,病院内に拠点をおく「病院拠点型」が求められる。
3.財政的支援の必要性
被害者が安心して心身のケアを受けられるセンターといえるには,被害者が,「だれでも」「いつでも」利用でき,きちんとした支援が途絶えることなくできなければならない。そこで,センターの具体的な必須条件としては,
① 性犯罪・性暴力について正しい知識・理解のある相談員が常駐すること
② 被害者が費用の心配をして相談・受診を躊躇せずにすむよう必要な検査や治療にかかる費用等を全て公費で賄う体制が調っていること
③ 支援機関へ繋ぐシステムが構築されていること
が求められる。
高いスキルを求められる相談員を常駐させるには,相談員をボランティアに頼っていては人材の確保は困難である。
そこで,機能的なセンターの設置・運営のためには,県は,検査や治療費等を賄うだけでなく,相談員等の人件費を含めた十分な財政的支援を行うべきである。
以上
広島県知事 湯﨑英彦 殿
広島弁護士会
会長 木村 豊
第1 意見の趣旨
1.広島県に対し,性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(性犯罪や性暴力被害に関し,関係諸機関が連携し,早期の適切な証拠保全と適切な被害者支援を一カ所で行うことができるセンター。以下,「センター」という。)を速やかに設置するよう求める。
2.広島県は,上記センターを病院内に拠点を有する「病院拠点型」とすべきである。
3.広島県に対し,センターの設置・運営に主体的に携わり,財政的支援を行うことを求める。
第2 意見の理由
1.センター設置の必要性
2014年(平成26年)に実施された男女間における暴力に関する調査(内閣府男女共同参画局実施)によれば,異性に無理矢理性交渉をされた人のうち,「警察に連絡・相談した」人は4.3%にとどまり,「どこ(だれ)にも相談しなかった」人は67.5%にも及び,多くの性犯罪・性暴力の被害者が,誰にも相談できず一人で問題を抱え込む実態が浮かび上がる。また,同調査によると,相談しなかった理由として相談機関に関連するものには,「恥ずかしくてだれにも言えなかった」(38%),「相談してもむだだと思った」(20.3%),「どこ(だれ)に相談してよいのかわからなかった」(5.1%)などが挙げられる。
こうした実態から国は第2次犯罪被害者等基本計画(平成23年3月閣議決定)において,被害者が安心して心身のケアを受けられるようセンターの設置を促進するための施策を盛り込み,全国18の都道府県においてセンターを設置している。中国地方においても岡山県,島根県及び鳥取県で既にセンターが設置済である。
広島県においても,被害者が安心して心身のケアを受けられるセンターを設置し,その存在を広く周知することで,一人でも多くの被害者が必要な支援を受けられる体制を速やかに調えることが求められる。
2.求められるセンターのあり方
性犯罪や性暴力の被害の中には,妊娠等に対する緊急対応が必要な事案等,その処置について一刻を争う場合があり(アフターピルの効用は72時間以内の投与で98%は避妊可能),かつ,医療機関による診察の結果を司法の場における証拠とするために組織や体液等を保存することが求められる事案もありうる。また,被害者が身体的精神的に不安を感じ,あるいは症状が出た場合には,いつでも専門家のアドバイス・治療を受けることができる場であることが必要である。そのためには,センターにおいて,速やかに専門医の診察が受けられる条件を整えることは必要であり,重要なことである。
センターを病院拠点型とすれば,被害者は被害直後の緊急対応等必要不可欠な医療を迅速に受けられるとともに,初期段階から精神面に対する長期的ケアを視野に入れた支援を受けることが可能となる。また,病院拠点型であれば相談をした場合に身体的ケアが受けられることは明確であり,被害者の安心に繋がる。
さらに,センターを利用するのは「性被害を受けた者」であるとの目が向けられやすく,ただでさえ相談を躊躇している被害者にとってハードルが高いところ,誰もが訪れやすい「病院」という施設にセンターを設置することで,被害者のセンター利用を促進することができる。さらに,相談員は被害者が繰り返し同じ事を話す負担をできるだけ軽減できるよう,知り得た情報を医師・看護師等に伝える必要があるが,情報量や伝達のスピード,正確性についても,同一病院内であれば,相談員と医療側がタッグを組んで支援をすることが可能となる。
以上より,被害者が安心して心身のケアその他の十分な支援を受けられるセンターのあり様としては,病院内に拠点をおく「病院拠点型」が求められる。
3.財政的支援の必要性
被害者が安心して心身のケアを受けられるセンターといえるには,被害者が,「だれでも」「いつでも」利用でき,きちんとした支援が途絶えることなくできなければならない。そこで,センターの具体的な必須条件としては,
① 性犯罪・性暴力について正しい知識・理解のある相談員が常駐すること
② 被害者が費用の心配をして相談・受診を躊躇せずにすむよう必要な検査や治療にかかる費用等を全て公費で賄う体制が調っていること
③ 支援機関へ繋ぐシステムが構築されていること
が求められる。
高いスキルを求められる相談員を常駐させるには,相談員をボランティアに頼っていては人材の確保は困難である。
そこで,機能的なセンターの設置・運営のためには,県は,検査や治療費等を賄うだけでなく,相談員等の人件費を含めた十分な財政的支援を行うべきである。
以上