勧告書・警告書2010.11.12
広島刑務所へコルセットの使用不許可に関する警告書
広島刑務所所長
室 憲治 殿
広島弁護士会 会長 大迫唯志
同会人権擁護委員会委員長 足立修一
警告書
当会は,A を申立人,貴所を相手方とする人権救済申立事件について,調査の結果,貴所に対し以下のとおり警告する。
第1.警告の趣旨
貴所は,申立人の在監中,その自弁のコルセットの使用を許可しなかったが,このような措置は,受刑者の自弁の物品のうち「手袋,マスクその他の身体に装着する物品(衣服を除く。)であって,受刑者の健康状態その他の事情に照らして使用することが必要なもの」の使用を許す旨定める刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則第15条5項3号に反するものであったと考えられる。
よって,今後,このような措置をとられないよう警告する。
第2.警告の理由
1.人権救済申立て
当会は,平成21年4月20日,申立人から,椎間板ヘルニアを患っており,レントゲン検査においても同疾患が確認されたにも拘らず,痛み止めの薬の処方を受けたことがあるのみで,コルセットの使用を許可してもらえないため,腰部の痛みが続いている旨の人権救済申立てを受理した。
2.調査結果
申立人及び貴所に対する聞き取り調査により,以下の事実を認めた。
(1)申立人によるコルセットの使用状況など
申立人は,以前から椎間板ヘルニアを患っており,同疾患による痛みを和らげるため,日常的にコルセットを使用していた。
申立人は,過去に,貴所の他にも府中刑務所,福島刑務所,静岡刑務所,横浜刑務所等の刑事施設に在監していたことがあるところ,これらの刑事施設においてはコルセットの使用が認められていた。
(2)貴所への移監後の状況など
申立人は,平成20年12月から貴所に在監していたところ,貴所に移監されるまで在監していた刑事施設においても,コルセットの使用を認められていた。
貴所に移監された後,申立人は,椎間板ヘルニアを患っていること,そのため自弁のコルセットの使用を認めてもらいたいことなどを訴えて医師による診察を受けたところ,同疾患を患っていることは確認されたが,診察を行った医師の意見は,申立人の症状はコルセットの使用が必要と認められるほどのものではないというものであった。
そのため,貴所は,申立人にコルセットの使用を許可しなかった。
ただし,申立人が,コルセットの使用が許可されないことによる腰部の痛みなどを訴えたことから,貴所は,椎間板ヘルニア及び脱腸による腰部の痛み止めとして使用させるため,申立人に対し薬(ポンタール)を処方したことがある。
なお,コルセットの使用を認めることにより,貴所において管理運営上の支障が生じるおそれがあるわけではなく,過去には,受刑者にコルセットの使用を認めた例もある。
3.当会の判断
(1)検討
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第41条1項5号を受けて,刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則第15条5項3号は,「手袋,マスクその他の身体に装着する物品(衣服を除く。)であって,受刑者の健康状態その他の事情に照らして使用することが必要なもの」について,自弁の物品の使用を許す旨定めている。
貴所は,申立人の診察を行った医師の意見を根拠として,コルセットの使用を認めなかったものであるが,貴所も認めていたように,申立人は,以前から日常的にコルセットを使用しており,過去に在監していた他の複数の刑事施設においてもコルセットの使用を認められていた。
また,貴所に在監していた当時,申立人は,椎間板ヘルニアによる腰部の痛みを訴えており,貴所もその訴えを認めてポンタールを処方していた。
加えて,コルセットの使用を許可しても,貴所に管理運営上の支障が生じるおそれはなかったというのであるから,これらの事情に照らすと,前記医師の意見のみを根拠にコルセットの使用を不許可とした措置を正当化することはできないというべきである。
(2)結論
したがって,申立人に自弁のコルセットの使用を許可しなかったことは,刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則第15条5項3号に反する措置であったと考えられる。
そのため,貴所に対し,今後このような措置を執ることがないよう警告する。
以上
広島刑務所所長
室 憲治 殿
広島弁護士会 会長 大迫唯志
同会人権擁護委員会委員長 足立修一
警告書
当会は,A を申立人,貴所を相手方とする人権救済申立事件について,調査の結果,貴所に対し以下のとおり警告する。
第1.警告の趣旨
貴所は,申立人の在監中,その自弁のコルセットの使用を許可しなかったが,このような措置は,受刑者の自弁の物品のうち「手袋,マスクその他の身体に装着する物品(衣服を除く。)であって,受刑者の健康状態その他の事情に照らして使用することが必要なもの」の使用を許す旨定める刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則第15条5項3号に反するものであったと考えられる。
よって,今後,このような措置をとられないよう警告する。
第2.警告の理由
1.人権救済申立て
当会は,平成21年4月20日,申立人から,椎間板ヘルニアを患っており,レントゲン検査においても同疾患が確認されたにも拘らず,痛み止めの薬の処方を受けたことがあるのみで,コルセットの使用を許可してもらえないため,腰部の痛みが続いている旨の人権救済申立てを受理した。
2.調査結果
申立人及び貴所に対する聞き取り調査により,以下の事実を認めた。
(1)申立人によるコルセットの使用状況など
申立人は,以前から椎間板ヘルニアを患っており,同疾患による痛みを和らげるため,日常的にコルセットを使用していた。
申立人は,過去に,貴所の他にも府中刑務所,福島刑務所,静岡刑務所,横浜刑務所等の刑事施設に在監していたことがあるところ,これらの刑事施設においてはコルセットの使用が認められていた。
(2)貴所への移監後の状況など
申立人は,平成20年12月から貴所に在監していたところ,貴所に移監されるまで在監していた刑事施設においても,コルセットの使用を認められていた。
貴所に移監された後,申立人は,椎間板ヘルニアを患っていること,そのため自弁のコルセットの使用を認めてもらいたいことなどを訴えて医師による診察を受けたところ,同疾患を患っていることは確認されたが,診察を行った医師の意見は,申立人の症状はコルセットの使用が必要と認められるほどのものではないというものであった。
そのため,貴所は,申立人にコルセットの使用を許可しなかった。
ただし,申立人が,コルセットの使用が許可されないことによる腰部の痛みなどを訴えたことから,貴所は,椎間板ヘルニア及び脱腸による腰部の痛み止めとして使用させるため,申立人に対し薬(ポンタール)を処方したことがある。
なお,コルセットの使用を認めることにより,貴所において管理運営上の支障が生じるおそれがあるわけではなく,過去には,受刑者にコルセットの使用を認めた例もある。
3.当会の判断
(1)検討
刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第41条1項5号を受けて,刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則第15条5項3号は,「手袋,マスクその他の身体に装着する物品(衣服を除く。)であって,受刑者の健康状態その他の事情に照らして使用することが必要なもの」について,自弁の物品の使用を許す旨定めている。
貴所は,申立人の診察を行った医師の意見を根拠として,コルセットの使用を認めなかったものであるが,貴所も認めていたように,申立人は,以前から日常的にコルセットを使用しており,過去に在監していた他の複数の刑事施設においてもコルセットの使用を認められていた。
また,貴所に在監していた当時,申立人は,椎間板ヘルニアによる腰部の痛みを訴えており,貴所もその訴えを認めてポンタールを処方していた。
加えて,コルセットの使用を許可しても,貴所に管理運営上の支障が生じるおそれはなかったというのであるから,これらの事情に照らすと,前記医師の意見のみを根拠にコルセットの使用を不許可とした措置を正当化することはできないというべきである。
(2)結論
したがって,申立人に自弁のコルセットの使用を許可しなかったことは,刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則第15条5項3号に反する措置であったと考えられる。
そのため,貴所に対し,今後このような措置を執ることがないよう警告する。
以上