勧告書・警告書2011.03.14
広島県内の私立高等学校に対する子どもの人権侵害に関する警告書(1/2)
学校法人E 理事長 F 殿
G高等学校 校長 H 殿
広島弁護士会
会長 大迫 唯志
警 告 書
当会は、学校法人E(以下、「貴法人」という。)及びG高等学校(以下、「貴校」という。)のH校長(以下、「H校長」という。)を相手方とする平成22年8月5日付け人権救済申立事件について、当会の子どもの権利委員会において、申立人、貴法人、及び貴校からの事情聴取の結果を踏まえて協議した結果に基づき、貴法人及びH校長に対し、以下のとおり警告する。
警告の趣旨
下記1及び2のH校長の発言は申立人の長女のY(以下「Y」という。)の人格権を不当に侵害したものであり、下記3の貴校の行為はYの意見表明の権利及び平等権を不当に侵害したものであるから、貴法人及びH校長に対し、本件発言及び行為についての反省を求めるとともに、今後生徒に対して同様の人権侵害を行うことのないよう警告する。
記
1 H校長は、平成22年6月23日、Yに対し、遅刻したことを注意し、その際、「邪魔しに来たならX(Yが元在学した中高一貫校)に帰ってちょうだい。」との発言をした。
2 H校長は、同年6月30日、Yに対し、「あなたのように学校のルールを守らない、学校の指導に乗ってない子に、生徒会に立って欲しくないの。」「(生活態度を)直してないのに、なんで(生徒会に)立つんですかって聞いてるの。」「ほんと、(高校に)入れるべきじゃなかった。」「Xに帰りんさい。」「どこが真面目なの。どこが勉強できるの。どこがいい子なの。ほんとに騙された。」「先生の言われることを真に受けて、あなたを入れたのは間違い。」「転校しないんだったら、静かに迷惑かけんようにおって。」との発言をした。
3 貴校は、Yが同年6月30日に生徒会役員の書記に立候補するとの届出を出していたにもかかわらず貴校作成の立候補者名簿にYの名前を記載せず、かつ、Yが同年7月1日の生徒会立候補者説明会に出席しようとして説明会会場の部屋に入室しようとしたにもかかわらず説明会会場の部屋への入室を制止し、Yの立候補を阻止した。
警告の理由
1 認められる事実
申立人及び貴校からの事情聴取の結果、並びに申立人提出の書面の記載により、以下の事実が認められる。
(1) Yは、平成22年3月に在学していたX中学校を卒業し、同年4月に貴校に入学した。
Yは、在学していた中高一貫校のX中学を卒業する際に別の高校を受験していたため、元在学した中高一貫校のX高校に内部進学することができなくなっていたところ、同校在学中に別途私的に教わっていたZ教師が貴校でも講師を務めていたことから、Z教師の紹介で貴校の見学に行き、貴校に入学することとなったという経緯がある。
(2) 平成22年6月16日の授業中、YのクラスのA担任教諭により抜き打ちの小テストが実施された際、Yは(Y本人の説明によると「面倒くさい」という意味で)「こんなんで覚えれん。まじきもい。」との発言をした。
これに対して、A担任教諭は、不適切な発言と考えて、注意したところ、Yは「先生に言ってないです。」と答えた。
(3) 平成22年6月23日、Yは、登校の際、友人との待ち合わせで最寄りの駅の近くに滞留していて貴校教諭から滞留しないですぐに登校するよう注意を受けたにもかかわらず、すぐに登校しなかったため数分の遅刻をし、校長室への呼出しを受け、校長室に行った。
H校長は、A担任教諭同席の場で、Yに対し、「近隣の迷惑になるので、駅近辺で滞留することはしないように繰り返し指導していたのに指導に従わなかったこと」を注意した。
その際、H校長は、Yに対し、「社会のとき、A先生に『きもい』と言ったでしょ。」と言い、Yは、「(A担任教諭に対しては)言ってないです。」と答えた。
また、H校長は、Yに対し、「邪魔しに来たならXに帰ってちょうだい。」等の発言をした。
(4) 平成22年6月29日の放課後の午後6時前、Yは、(推薦者1名の名前を記載した上で)生徒会役員の書記に立候補するとの届出書をB教諭に提出して、生徒会役員の書記に立候補した。
翌日の30日、Yは、貴校所属のC教諭が作成した「呼出メモ」により、校長室への呼出を受け、放課後に校長室に行った。
H校長は、Yに対し、「あなたのように学校のルールを守らない、学校の指導に乗ってない子に、生徒会に立って欲しくないの。」「(生活態度を)直してないのに、なんで(生徒会に)立つんですかって聞いてるの。」との発言をした。
その際、H校長は、Yに対し、他に、「ほんと、(高校に)入れるべきじゃなかった。」「Xに帰りんさい。」「どこが真面目なの。どこが勉強できるの。どこがいい子なの。ほんとに騙された。」「Z教師の言われることを真に受けて、あなたを入れたのは間違い。」「転校しないんだったら、静かに迷惑かけんようにおって。」との発言をした。
また、H校長は、Yに対し、「態度が非常によろしくない。みんな不快。」「Z教師が教えるわけじゃない。」「授業中寝るなと言われないと寝るんですか。」「生徒会じゃない。その前に自分の身をきちっと考えなさいよ。」「人にねえ、悪影響を及ぼしなさんな。」「大変困っています。」との発言をした。
(5) 平成22年7月1日、生徒会役員に立候補した生徒は立候補者として候補者名簿に氏名が記載され校内に名簿が張り出されたが、そこにはYの名前は記載されていなかった。なお、生徒会役員の定数は、生徒会長1名、副会長1名、書記2名、会計2名、体育委員長1名、風紀委員長1名、厚生委員長1名、図書委員長1名、音楽委員長1名であり、立候補には推薦者1名が必要であり、Yも友人の生徒が推薦者になっていた。
Yは、生徒会立候補者説明会に出席しようとして、推薦者の友人たちと一緒に、説明会会場の部屋(図書室)に入室しようとしたが、生徒会担当のD教諭により説明会会場の部屋(図書室)への入室を制止され、別室に連れていかれた。
Yが生徒会役員立候補の扱いについて説明を求めると、生徒会担当のD教諭は「校長先生から話があったと思うけど」と前置きの上で、立候補について「土日はレッスンで忙しいと思われる」「今回は仕方ない」等と述べて「立候補は認められない」「生活態度を改めれば立候補を認めてもらえる」という趣旨の説明をした。なお、貴校には生徒会役員の立候補資格に関する規則は存在していない。
Yは、生徒会に立候補したいと訴えて涙を流したが、生徒会担当のD教諭は、「Yに直すべきところがある」という趣旨の話をした。
Yは、立候補が認められなかったことでショックを受け(Yの説明では「過呼吸」となり)、生徒会担当のD教諭はYに対して水とビニール袋を渡した。
(6) その後、Yは、平成22年7月12日から「抑うつ状態」の通院治療を受けており、平成22年7月23日の診断書では「平成22年6月30日以降の学校の対応によって生じたストレスが関与していると考えます」との診断がなされている。
2 上記の認定した事実についての当事者の認否
(1) 申立人及びYの認否
認めている。
(2) 貴法人の理事長及び貴校のH校長の認否
認めている。
以上
学校法人E 理事長 F 殿
G高等学校 校長 H 殿
広島弁護士会
会長 大迫 唯志
警 告 書
当会は、学校法人E(以下、「貴法人」という。)及びG高等学校(以下、「貴校」という。)のH校長(以下、「H校長」という。)を相手方とする平成22年8月5日付け人権救済申立事件について、当会の子どもの権利委員会において、申立人、貴法人、及び貴校からの事情聴取の結果を踏まえて協議した結果に基づき、貴法人及びH校長に対し、以下のとおり警告する。
警告の趣旨
下記1及び2のH校長の発言は申立人の長女のY(以下「Y」という。)の人格権を不当に侵害したものであり、下記3の貴校の行為はYの意見表明の権利及び平等権を不当に侵害したものであるから、貴法人及びH校長に対し、本件発言及び行為についての反省を求めるとともに、今後生徒に対して同様の人権侵害を行うことのないよう警告する。
記
1 H校長は、平成22年6月23日、Yに対し、遅刻したことを注意し、その際、「邪魔しに来たならX(Yが元在学した中高一貫校)に帰ってちょうだい。」との発言をした。
2 H校長は、同年6月30日、Yに対し、「あなたのように学校のルールを守らない、学校の指導に乗ってない子に、生徒会に立って欲しくないの。」「(生活態度を)直してないのに、なんで(生徒会に)立つんですかって聞いてるの。」「ほんと、(高校に)入れるべきじゃなかった。」「Xに帰りんさい。」「どこが真面目なの。どこが勉強できるの。どこがいい子なの。ほんとに騙された。」「先生の言われることを真に受けて、あなたを入れたのは間違い。」「転校しないんだったら、静かに迷惑かけんようにおって。」との発言をした。
3 貴校は、Yが同年6月30日に生徒会役員の書記に立候補するとの届出を出していたにもかかわらず貴校作成の立候補者名簿にYの名前を記載せず、かつ、Yが同年7月1日の生徒会立候補者説明会に出席しようとして説明会会場の部屋に入室しようとしたにもかかわらず説明会会場の部屋への入室を制止し、Yの立候補を阻止した。
警告の理由
1 認められる事実
申立人及び貴校からの事情聴取の結果、並びに申立人提出の書面の記載により、以下の事実が認められる。
(1) Yは、平成22年3月に在学していたX中学校を卒業し、同年4月に貴校に入学した。
Yは、在学していた中高一貫校のX中学を卒業する際に別の高校を受験していたため、元在学した中高一貫校のX高校に内部進学することができなくなっていたところ、同校在学中に別途私的に教わっていたZ教師が貴校でも講師を務めていたことから、Z教師の紹介で貴校の見学に行き、貴校に入学することとなったという経緯がある。
(2) 平成22年6月16日の授業中、YのクラスのA担任教諭により抜き打ちの小テストが実施された際、Yは(Y本人の説明によると「面倒くさい」という意味で)「こんなんで覚えれん。まじきもい。」との発言をした。
これに対して、A担任教諭は、不適切な発言と考えて、注意したところ、Yは「先生に言ってないです。」と答えた。
(3) 平成22年6月23日、Yは、登校の際、友人との待ち合わせで最寄りの駅の近くに滞留していて貴校教諭から滞留しないですぐに登校するよう注意を受けたにもかかわらず、すぐに登校しなかったため数分の遅刻をし、校長室への呼出しを受け、校長室に行った。
H校長は、A担任教諭同席の場で、Yに対し、「近隣の迷惑になるので、駅近辺で滞留することはしないように繰り返し指導していたのに指導に従わなかったこと」を注意した。
その際、H校長は、Yに対し、「社会のとき、A先生に『きもい』と言ったでしょ。」と言い、Yは、「(A担任教諭に対しては)言ってないです。」と答えた。
また、H校長は、Yに対し、「邪魔しに来たならXに帰ってちょうだい。」等の発言をした。
(4) 平成22年6月29日の放課後の午後6時前、Yは、(推薦者1名の名前を記載した上で)生徒会役員の書記に立候補するとの届出書をB教諭に提出して、生徒会役員の書記に立候補した。
翌日の30日、Yは、貴校所属のC教諭が作成した「呼出メモ」により、校長室への呼出を受け、放課後に校長室に行った。
H校長は、Yに対し、「あなたのように学校のルールを守らない、学校の指導に乗ってない子に、生徒会に立って欲しくないの。」「(生活態度を)直してないのに、なんで(生徒会に)立つんですかって聞いてるの。」との発言をした。
その際、H校長は、Yに対し、他に、「ほんと、(高校に)入れるべきじゃなかった。」「Xに帰りんさい。」「どこが真面目なの。どこが勉強できるの。どこがいい子なの。ほんとに騙された。」「Z教師の言われることを真に受けて、あなたを入れたのは間違い。」「転校しないんだったら、静かに迷惑かけんようにおって。」との発言をした。
また、H校長は、Yに対し、「態度が非常によろしくない。みんな不快。」「Z教師が教えるわけじゃない。」「授業中寝るなと言われないと寝るんですか。」「生徒会じゃない。その前に自分の身をきちっと考えなさいよ。」「人にねえ、悪影響を及ぼしなさんな。」「大変困っています。」との発言をした。
(5) 平成22年7月1日、生徒会役員に立候補した生徒は立候補者として候補者名簿に氏名が記載され校内に名簿が張り出されたが、そこにはYの名前は記載されていなかった。なお、生徒会役員の定数は、生徒会長1名、副会長1名、書記2名、会計2名、体育委員長1名、風紀委員長1名、厚生委員長1名、図書委員長1名、音楽委員長1名であり、立候補には推薦者1名が必要であり、Yも友人の生徒が推薦者になっていた。
Yは、生徒会立候補者説明会に出席しようとして、推薦者の友人たちと一緒に、説明会会場の部屋(図書室)に入室しようとしたが、生徒会担当のD教諭により説明会会場の部屋(図書室)への入室を制止され、別室に連れていかれた。
Yが生徒会役員立候補の扱いについて説明を求めると、生徒会担当のD教諭は「校長先生から話があったと思うけど」と前置きの上で、立候補について「土日はレッスンで忙しいと思われる」「今回は仕方ない」等と述べて「立候補は認められない」「生活態度を改めれば立候補を認めてもらえる」という趣旨の説明をした。なお、貴校には生徒会役員の立候補資格に関する規則は存在していない。
Yは、生徒会に立候補したいと訴えて涙を流したが、生徒会担当のD教諭は、「Yに直すべきところがある」という趣旨の話をした。
Yは、立候補が認められなかったことでショックを受け(Yの説明では「過呼吸」となり)、生徒会担当のD教諭はYに対して水とビニール袋を渡した。
(6) その後、Yは、平成22年7月12日から「抑うつ状態」の通院治療を受けており、平成22年7月23日の診断書では「平成22年6月30日以降の学校の対応によって生じたストレスが関与していると考えます」との診断がなされている。
2 上記の認定した事実についての当事者の認否
(1) 申立人及びYの認否
認めている。
(2) 貴法人の理事長及び貴校のH校長の認否
認めている。
以上